法律と会計監査に関する制度について〜裁判官と監査人の役割〜

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今回は、法律と会計監査に関する制度について、裁判官と監査人の役割の視点からご説明します。

 

法律について

裁判を想定しますと、基本原理は「正義と公平の実現にある」と言われています。
事実を認識して法律にあてはめ、裁判官が判断を下す、というプロセスは皆さんもご存じの通りだと思います。
ここで法律に瑕疵がある場合、裁判官はどうしたらよいのでしようか。

 

その前に、事実として、法律は必ずしも万能なものではなく、そもそも、社会にとって矛盾や不都合な事例が生じた際に、立法で対応するのが一義的な対応であることを忘れないでください。
それができない場合に、裁判官の役割が重要になってくるのです。
元東大教授で判例法やケースメソッドによる法律の学習の重要性を説いていらした末弘厳太郎先生が、裁判官は正義公平を図るために法を創造する役割を果たすべきだと仰っています。この例として、法のもつ本来の意義を果たすものとして大岡裁きを掲げていました。60年以上昔にこのような説を主張されていた先見性と説得力ある話の展開には敬服という以外言葉がありません。

 

会計監査について

公認会計士の監査における役割は、経済的事実が財務諸表に忠実に反映されているかどうか、言葉を替えれば、経済的実態の解明の手段だと言えるでしょう。そのような手段としての役割を果たすために、会計基準を判断基準として意見表明をする業務が監査です。ご存知の方も多いかと思います。

 
もし、意見表明をする場合に、言葉で書かれた規定された会計基準に瑕疵がある場合は、公認会計士はどうしたらよいのでしょうか。そもそも経済活動、あるいは経済取引はどんどん変わっていきます。そこで会計基準が不適切、あるいは瑕疵があるような場合、基準の改訂は必要ですが、間に合わないといった場合も少なくないでしょう。このような場合を想定してみると下記の主張がまさに当てはまると思います。

 
このような場合、監査人の役割はとても重要になってきます。この点について説いたのが元一橋大学教授の岩田巌教授です。公認会計士監査においては、基準に問題がある場合、経済的事実を財務諸表に反映させるにはどうしたらよいのかということを会計専門家として、会計「学」の理論を演繹して、企業の財務諸表を適切になるべく指導していく役割があると主張されたのです。先生はこの役割について監査の批判性機能とともに、指導性機能として理論を展開されていたわけですが、その慧眼には敬服としか言えません。

 

裁判官と公認会計士の役割

両者、裁判官と公認会計士の役割は上述の話からするとおわかりだと思います。問題がある場合にその問題を解決するように専門家として基準の問題を解決すべき役割を担うということなのです。

 
前者に関しては、民間人の導入によって公平・妥当な結論を導くための裁判制度が導入され、裁判官の方の創造あるいは補完という役割を民間人が一部担うという制度は、実務的には定着したと言えるでしよう。

 
後者に関しては、制度自体には変わりはさほどありません。しかし、多くの監査の失敗から会計基準や監査基準の改訂がなされ、会計士協会の指導監督が厳格化されて対応が図られてきました。
また、実際は問題があるようです。会計基準に合致しない会計処理があると、経済的実態を表すにはよりよい処理があるような場合でも、基準を金科玉条のように形式的に当てはめ、意見表明をするというようなのです。とした場合、どのような問題になるでしょうか。経済的実態は反映しないけれども基準通りにやるという実務が定着してしまいます。岩田教授の主張されていた指導性機能というものはまったく発揮されないということに理論的にはつながります。

 
専門家として、基準が妥当がどうかをまず考えて、より適切な処理になるように会計学の理論を駆使して財務諸表は作成されるべきものではないでしょうか。基準を創造、あるいは補完する役割であるということを忘れてほしくはないものです。

 

 

編集:PILES GARAGE 編集部
 
整備士プロフィール

安村 雅己
株式会社mannaka/監査役
安村税理士オフィス/代表
会計税務等関与して35年。中堅企業や医療関係、非営利法人等多様な実務経験あり。
起業を起点として、会社の為、経営の安定成長を目指しています。
夢の共有がすべてだ。税務、会計のみならず法務、財務といった幅広い知見をフル活用。
一橋大学大学院博士前期課程修了の税理士、法学修士として、広範な問題に対応。
研究者、講師や監事、監査役も。戦う税理士としてクライアントの為に全力投球。

 

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