利益が一瞬で吹き飛ぶ? 積極的な投資を行うソフトバンクが抱えるリスクとは?

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相次ぐM&Aや10兆円ファンド立ち上げ 積極的な投資を進めるソフトバンク

近年ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンク)は約3.3兆円での半導体設計会社ARMの買収や約10兆円規模のファンドを立ち上げベンチャー企業に対して巨額の投資を行うなど、その積極的な投資が注目を集めています。つい最近では、米ウーバーへの出資やサウジアラビアへの最大2.8兆円の投資計画がニュースとして取り上げられました。
現在、日本企業で最も攻めの経営を行っているのはソフトバンクであるといっても過言ではないでしょう。
しかし積極的な投資が市場を賑わせる一方で、その巨額な投資にはそれ相応のリスクも伴います。今回はソフトバンクが抱える潜在的な財務リスクについて、解説していきたいと思います。

 

ソフトバンクに潜むリスクとは?

現在、ソフトバンクにおける最大のリスクは、資産として計上されている巨額ののれんです。ソフトバンクは企業を買収することによって多額ののれんを資産として計上しています。まずソフトバンクの話をする前に、のれんについて聞いたことはあるけど中身はわからないという人が多いと思うのでのれんの説明を簡単にしたいと思います。

 

“のれん”とは?

のれんとは買収した企業のブランド力や製品開発力、顧客ネットワークなど純資産で表すことができない資産価値を表しており、企業の超過収益力と説明されることもあります。具体的なのれんの金額は買収した企業の純資産の価格と、取得価格との差で計算されます。例えば、A社が100憶円の資産価値があるB社を150憶円で買収したとしとすれば、資産として計上されるのれんは50億円になります。

 

のれんの会計処理

日本の会計基準では、のれんは無形固定資産として計上され、減価償却を行います。一方で、IFRS(国際会計基準)では減価償却を行う必要がありません。ただし、のれんに対する減損会計はどちらも要求されます。減損会計とは、資産の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合、その資産の帳簿価格にその価値を反映させる会計処理のことを言います。のれんの減損損失が出た場合、費用として損益計算書で計算し、当期純利益の減少要因となります。

 

のれんのリスク・減損

多額ののれんを抱えている企業は一気に損失が出る可能性があります。特に、IFRSを採用している企業は、のれんを償却しなくてもいいので日本の会計基準より定期的な利益減少が少ないですが、のれんの価値が下がった場合一度に多額の減損を計上しなくてはいけません。
減損のわかりやすい例としては東芝が挙げられます。不正会計問題で話題となった東芝は原発事業をめぐる減損損失を7,125億円計上しており現在かなりの逆境に立たされています。これはかなり極端な例ですが、のれんの減損に関するリスクがよくわかると思います。

 

ソフトバンクののれん

では、ソフトバンクが保有するのれんについて、1.まずどれくらいのれんを資産として計上しているのか、2.のれんの構成はどうなっているか、3.ソフトバンクに減損損失のリスクはないのかという3つの視点から見ていきたいと思います。

 

ソフトバンクののれん総額

現在、ソフトバンクは約4.4兆円もののれんを資産として計上しています。同じ国内情報通信業界の競合相手であるNTT、KDDIと比較すると、ソフトバンクののれんが競合2社を大きく上回っておりその金額の大きさがわかります。この4.4兆円という金額は現在日本で最大です。

 

ソフトバンクののれんの中身

ソフトバンクはこれまで積極的な買収によって多額ののれんを資産計上してきました。中でも米スプリント社とイギリスのARM社は買収当時、その巨額な買収金額が話題となり現在でもこの2社で多額ののれんが計上されています。スプリントののれんは約3,000億円、ARMののれんは約3兆円です。
余談ですがソフトバンクは当時ロンドン証券取引所に上場するARM社に対して、43%のプレミアムを付けて3.3兆円という破格の値段で買収しました。その金額はARMの自己資本(約2,500億円)に対して約3兆500億円も上回っていました。下の図を見ていただければ、いかにARMののれんの金額が膨大であるかわかると思います。

 

ソフトバンクののれんに関するリスクは?

将来必ずしものれんの減損損失が発生するわけではありません。しかし、もし減損損失が発生した場合ソフトバンクは多額ののれんを計上しているので大きな打撃を受けることになるでしょう。減損のリスクを見極めるためには買収した企業の業績がどうなっているかが大きな焦点となります。
なので、次にソフトバンクののれんの中で大きな割合を占めるスプリントとARMの展望についてそれぞれ見ていきたいと思います。

 

スプリントの業績展望

スプリントはアメリカの加入者数第4位の携帯事業者です。
肝心のスプリントの業績ですが決して良いとは言えません。2017年4~6月期にリストラによる大幅なコスト削減によって3年ぶりに黒字へと転じました。しかし、最新の7~9月期決算では再び約4,800万ドル(約1億4,200万円)の赤字となっており、厳しい状況がなお続いています。
また業界1、2位の企業に対抗するために計画されていた業界3位のTモバイルとの合併は、経営権に関する交渉の折り合いがつかずに破談となりました。
スプリントの経営が抜本的に改革されなければ、ソフトバンクは将来的に大幅な減損を計上しなくてはいけない可能性があります。

 

ARMの業績展望

ARMはイギリスの半導体設計会社です。ソフトバンクののれんの中でかなりの割合を占めるARMですが、そのポテンシャルを考えると将来的に大きな成長が見込める企業だといえます。
現在、ARM の技術を利用した半導体はスマートフォンの約90%に搭載されており、圧倒的な市場シェアを誇っています。また外部環境としては、IoT(モノがインターネットで繋がる)の時代が来るといわれています。電子機器に欠かせない半導体で圧倒的なシェアを握るARM はかなり良いポジションに位置しているといえるでしょう。
ARMは規模としてはまだ大きくない会社ですが、上記の通り将来的に大きな成長が見込めます。よって、当分の間はソフトバンクのARMに関する減損のリスクは高くないといえます。
ただしこの先、競合の出現や外部環境の変化によってソフトバンクが想定するような成長が達成されなければ、多額の減損を計上しなければいけません。

 

ソフトバンクののれん解説 まとめ

・ソフトバンクは日本で最ものれんを計上している企業である

・のれんが減損になった場合、多額の損失を出す可能性がある

・リスクを見極めるにはのれんとして計上されている企業の将来性を注視することが重要

 

今回の記事ではソフトバンクのリスクの大きさについて解説しましたが、リスクの大きさは同時リターンの大きさも意味します。ソフトバンクは日本企業としては珍しいハイリスクハイリターンを求める企業です。今後のソフトバンクの展開に要注目です。

 

 

参考文献等

  1. EDINET http://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
  2. 東洋経済オンライン「注意!『のれん代』が大きい200社ランキング」 http://toyokeizai.net/articles/-/126447
  3. 東洋経済オンライン「孫社長が語った『スプリント反転』本当か」 http://toyokeizai.net/articles/-/104875
  4. ZUU online「ソフトバンクが10兆円規模の投資ファンド設立」 https://zuuonline.com/archives/153509
  5. 日本経済新聞「『のれん』最大の29兆円 上場企業、大型M&A増加で」 https://www.nikkei.com/article/DGXLZO14241570X10C17A3EA5000/
  6. 日本経済新聞「ソフトバンク、財務体質に懸念 有利子負債巨額に」 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23125150V01C17A1TJC000/

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス
 

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
エスネットワークスは、「経営者の視点でニーズを掴み、経営者の視点で課題を解決し続ける、最強パートナー」を実現すべく、成長し続けています。
 

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