ベトナムの不動産デベロッパー大手「ビングループ」とは? 成長要因に迫る

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ベトナムの不動産開発を担う「ビングループ」

ベトナムに行ったことがあるでしょうか。ハノイやホーチミンに行くなら、一等地にそびえ立つ「ビンコムセンター (Vincom Center) 」や便利なコンビニ「ビンマート・プラス(Vinmart +)」、ニャチャンやフーコック島に行くなら、最大級の遊園地「ビンパーランド(Vinpearl Land)」が人気です。これらの施設の共通点は名前に「ビン(Vin)」という文字が付いていることですが、その理由はこれらの施設は全てベトナムの不動産最大手ビングループ(Vingroup)の子会社の施設だからです。

 

「ビンコム・リテール(ビングループ傘下のショッピングモール運営会社)がホーチミン証券取引所に上場した。上場初日の時価総額は77兆ドン(約3,860億円)とベトナム上場企業のトップ10に入った。」という内容の記事が11月9日の日本経済新聞に掲載されました(1)。今回はそのビングループとはどんな会社なのかを見ていきましょう。

 

ビングループの事業 不動産など4つの中核事業を手がける

ビングループはベトナムの大手不動産デベロッパーであり、ベトナム国内市場では一番資本金が多い私企業です。長期的な視点と持続的な成長を追求すると共に、ビングループは不動産と旅行産業を中心に投資する企業です。ベトナム設立当初からの主力の戦略的ブランドはビンパール (Vinpearl)とビンコム( Vincom)です。ビングループの4つの中核事業を以下の図のようにまとめました。 ビングループはそれぞれの中核事業の中で様々な事業・ブランドを展開しています。

 

 

ビングループ、増収増益で成長持続

ビングループの2016年度決算は売上高が前年度期比69%増、純利益が同134%増益で増収増益を達成しています。部門別では、不動産販売が前年同期比76%増収、小売が同115%増収、ホテル・レジャーが同49%増収、不動産賃貸が同25%増収、病院経営が同42%増収、教育が同39%増収と、すべての部門が2016年度は好調で、全体的に成長しました。

 

 

また、2012年から2016年までの売上高の推移をみるとビングループが連続して成長していることが分かります。

 

 

参考までにドン/円レートを参照すると、1 ドンは0.004955円(12月19日 時点)です。

 

ビングループの持続的成長の要因とは?

上述のビングループが手がけている事業をみれば明らかなように、ビングループは多角化企業です。現在ベトナムでは、企業の多角化戦略が行われておりますが、実は多くの多角化企業が困難な状況に陥っています。また、実際に大手の公企業は多角化戦略から集中化戦略にシフトしており、それは国の政策だと思われます。しかしそのような状況の中で、私企業であるビングループは多角化戦略を選択しながらも安定的成長を遂げることができております。企業を成長させるためには適切な経営戦略とリーダーの能力が大前提です。以下に成長を遂げるビングループの管理戦略とリーダーをご説明します。

 

ビングループの管理戦略 「アメーバ経営」との共通点

日本を代表する優良企業である京セラと、稲盛氏のアメーバ経営についてご存じの方は少なくないでしょう。実はビングループの管理戦略はアメーバ経営と共通点があります。

 

企業の管理組織は歴史的には、製造業や販売業などの単一職能企業に適した直線組織、垂直統合企業に適した職能部門別組織、多角化企業に適した事業部制組織と発展してきました。実際に、アメーバ経営を導入する京セラは事業の多角化を積極的に推進していたことで事業部制組織を採用しました。ビングループも当然多角化企業なので事業部制組織を採用しています。

 

また、上總氏によると、アメーバ組織では社長はもちろん利益責任を負いますが、製造部長も販売部長も利益責任を負うことになります。そして、アメーバ組織はラインスタッフ制組織として編成されます。ライン部門は利益を生み出す「採算部門」であり、プロフィットセンター(P&L、profit-and-loss centersの略)と位置づけられ、独自に経営、決算、経営結果に対する責任を負う組織です。スタッフ部門は利益を生まない「非採算部門」であり、コストセンターです(3)

 

ビングループの場合はどうでしょうか。記事の最初で紹介した通り、ビングループには4つの中核事業があります。実はその中に6つの企業グループがあり、それぞれが6つの独立したプロフィットセンターに分けられます。その結果ビングループは他の企業と異なり、それぞれの事業がそれぞれの経営責任を負うことで、企業が様々な事業を展開してもしっかり利益管理することができるのです。

 

ビングループのリーダー 「人」を第一にするブオン会長

ビングループの設立者はファム・ニャット・ブオン会長です。ブオン会長は米経済誌フォーブスの世界長者番付で2017年11月に794位となり、前年度より73位順位を上げました。資産は29億USD(約3,300億円)で同年3月と比べて+21%増加しました(4)。そして現在のビングループの成長のためには、ブオン会長の存在が不可欠です。

 

ブオン会長はViettelグループの経営者との会談において、彼自身の経営フィロソフィーについてお話しされたことがありました(5)。ブオン会長の経営フィロソフィーのポイントを以下のように3つに簡単にまとめてみました。

 

  1. ビングループを社員の能力向上のための学習組織に変換する
  2. 人事管理では平等を目指す
  3. 会社の起業家精神を永遠に維持する

 

ブオン会長の経営理念は「人を第一にする」ことです。社員の教育に力を入れる、能力に応じて挑戦の場が与えられること、そして起業家精神を広げることで、個々人の可能性を最大限に活かし企業の持続的成長に貢献してもらうことです。

 

「グローバリゼーション」を象徴するビングループ

今回はベトナムで最大の不動産デベロッパーを率いるビングループをご紹介しました。
その中でも述べましたが、企業の成長のためには様々な要因があり、管理戦略とリーダーの役割は大きな要因といえるでしょう。また、グローバリゼーション時代には企業は1つの事業を1ヶ所で展開するだけでなく、様々な事業を複数箇所で多角化する傾向があります。
ビングループはまさに、グローバリゼーション時代を象徴するような優良企業ともいえるでしょう。日本の企業や投資家がベトナムへ進出する場合、ベトナム政府の政策を調査するだけでなく、ビングループのような現地の優良企業についてもしっかり調べておくと、より成功できる戦略を立てられると考えます。

 

 

参考文献

  1. 日本経済新聞「越ショッピングモールのビンコムが上場」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23300070Z01C17A1FFE000/
  2. Vingroup「Annual Report 2016」http://vingroup.net/Uploads/0_Quan%20he%20co%20dong/0_Vingroup_2017/05/Vingroup_AnnualReport2016_vF_VN.pdf
  3. 上總康行「京セラのアメーバ経営の仕組み ―機会損失の創出と全員参加経営の視点から―」http://www.kansai-u.ac.jp/Keiseiken/publication/seminar/asset/seminar10/seminar10_k191.pdf
  4. VIET JO「世界長者番付、ビンG会長とベトジェット社長が順位急上昇」http://www.viet-jo.com/news/economy/171114161817.html
  5. 「“ベトナム株長者番付のブオン会長とフィロソフィー”  Tỷ phú Phạm Nhật Vượng và lần đầu hé lộ triết lý kinh doanh」http://vietbao.vn/Kinh-te/Ty-phu-Pham-Nhat-Vuong-va-lan-dau-he-lo-triet-ly-kinh-doanh/530256432/88/

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス
 

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
エスネットワークスは、「経営者の視点でニーズを掴み、経営者の視点で課題を解決し続ける、最強パートナー」を実現すべく、成長し続けています。
 

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