競争激化の化粧品業界の2位、カネボウを傘下に持つ花王

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異業種参入で競争激しい化粧品業界分析シリーズ4

資生堂に続いて、次に花王についてみていきたいと思います。まずは花王の概略から紹介します。

 

花王の沿革

(沿革)

1887年 初代・長瀬富朗が、花王の前身の洋小間物商「長瀬商店」を創業

1902年 原料仕込みから包装までを一貫生産する直営工場として、請地工場完成

1949年 東京証券取引所に株式を上場

1964年 初の海外拠点となる、花王インダストリアル(タイランド)社設立

1971年 西ドイツのバイヤスドルフ社との合併で、ニベア花王株式会社設立

1982年 ソフィーナ誕生

1993年 上海花王社設立

1995年 企業理念「花王の基本理念」を策定

2002年 アメリカとイギリスを拠点とした、プレミアムヘアメーカーのジョン フリーダ社を買収

2005年 イギリスのモルトンブラウン社買収

2006年 株式会社カネボウ化粧品を買収

2012年 欧米ビューティーケア事業のマネジメントを統合し、一体運営を開始。

2013年 北欧でのビューティーケア事業強化のために企業買収を行い、花王(スウェーデン)社に改称

 

花王の事業セグメント別売上

(出所)花王株式会社 「2016年12月期 有価証券報告書」を基に筆者作成

 

1.花王は洗剤など日用品のイメージが強いですが、実は化粧品やスキンケア、ヘアケアなどの「ビューティーケア事業」が4割を占めております。

2.また研究開発においては、「商品開発研究」と「基盤技術研究」の2つの研究機能をテーマに応じて組み合わせ、両者が連携して研究活動を推進しています。

3.ビューティーケア事業の海外展開においては、「Bioré」(日本誕生スキンケア製品)や、「Jergens」(米国100年以上前誕生スキンケアブランド)、「Asience」(プレミアムヘアケアブランド)など、欧米を中心に展開しています。

 

花王は、日本最大の日用品メーカーであり、販売品は化粧品のみならず、石鹸、ベビー用品、洗剤、油脂製品等を製造販売しており、先ほどのグラフのとおり、4つの事業に分けられます。化粧品はビューティーケア事業で管轄しています。大まかにいいますと、ヒューマンヘルスケア事業はシャンプーや紙おむつ等、ファブリック&ホームケア事業は洗剤、ケミカル事業は油脂関連製品等を取り扱うとなっております。ここでは、ビューティーケア事業に焦点を当てて解説をしていきます。

 

花王のニュース

まずは、最近のニュースから見ていきましょう。
2017年10月31日の日本経済新聞に「花王、最高益下の憂い 1~9月、化粧品出遅れ鮮明 」との記事が掲載されました。
記事によると、原因は高級ブランドの出遅れとのことです。去年は白斑問題を挽回し、長期の業績不調を改善するために、カネボウの名を冠する高級ブランド、「KANEBO」を発表し、また花王の代表ブランド「ソフィーナ」でも、高級スキンケア化粧品を新たに発売しました。しかし、山内憲一執行役員によると、「インバウンドを取り込めていない」とのことです。
化粧品のインバウンド消費は、ここ数年で、数倍と爆発的に膨れ上がっていますので、その波に乗り切れなければ、他社、特に資生堂に差をつけられてしまうでしょう。

花王はこれ以前の、2015年11月13日に新ブランド「SOFINA iP」の販売を開始しております。同時に、固定客の増大を狙って、東京・銀座に「SOFINA Beauty Power Station」というソフィーナに特化した専門店をオープンしました。
しかし、そうした努力にかかわらず、日経新聞の報道によると、花王の化粧品は、「購買意欲をかき立てる刺激に欠ける」(外資系証券)との厳しい見方もあり、あまり業績が改善しておりません(https://www.nikkei.com/article/DGKKZO22899350Q7A031C1DTC000/)。実際、花王はカネボウを買収して10年以上たちますが、白斑問題が発生するなど、買収による相乗効果は十分に得られていないといえるでしょう。

2017年12月期第3四半期の花王の決算短信によりますと、化粧品事業を含むビューティケア事業の売上は、前年同期比3.6%減の4,256億円となっております。ちなみに、2016年度同期売上は4,416億円、2015年度同期売上は4,386億円となっており、その当時の年度売上実績は、それぞれ、6,086億円、6,016億円となっております。化粧品のインバウンド消費が伸び悩んでいるとのことですので、今年度の当該事業売上は、それらの値を上回れるかどうか、というあたりに落ち着くと予想されます。

 

(出典)

日本経済新聞「花王、最高益下の憂い 1~9月、化粧品出遅れ鮮明 」 2017年10月31日 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO22899350Q7A031C1DTC000/

日本経済新聞「花王、化粧品事業てこ入れ 「ソフィーナ」に新シリーズ」 2015年8月27日 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO91011780X20C15A8TI5000/

花王株式会社 2017年12月期第3四半期 決算短信

花王株式会社 2016年12月期第3四半期 決算短信

 

花王とカネボウの統合加速

ここで、花王とカネボウの関係について、述べておきます。
周知の通り、2006年1月に花王は当時経営破綻をしていたカネボウ株式会社の化粧品事業である株式会社カネボウ化粧品を4,100億円で買収しました。当初は花王とカネボウの化粧品事業の合体によるシナジー効果も期待されましたが、ブランド力や化粧品の売上実績等で親会社を凌ぐカネボウを尊重してか、経営や人事等にあまり深く介入してこなかったようです。( http://biz-journal.jp/2013/11/post_3280.html ) しかしそれも徐々に変わりつつあるようです。

2017年7月1日の日本経済新聞に「花王・カネボウ、販社統合 売り場作り一体」との記事が報道されました。
これによると、花王はグループ会社のカネボウ化粧品と販社部門を統合するそうです。実際、花王の6月30日付のニュースリリースをみてみますと、花王とカネボウは2018年1月1日より販売会社を1つにし、それにより、“花王グループの総合力を発揮し、流通企業との取り組みを強化する”と発表しています。これは、花王とカネボウの組織統合がさらに進むことを意味しています。実際、これに先立つ2014年に花王とカネボウの生産と研究部門の統合が行われ、更に、2016年1月1日に、花王とカネボウの販売部門を統合する花王グループカスタマーマーケティング株式会社が設立されました。今回の販売統合により、花王とカネボウの組織統合は、総務・人事等を残して、ほぼ統合が行われたことがわかります。(https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ24HWI_U5A920C1TJC000/)

その一方で、花王とカネボウは社風がだいぶ違うことで知られています。
現在は、段階的に統合してきているとはいえ、まだまだ模索の段階のようです。花王は研究開発に重きを置いており、その本領が発揮されやすいスキンケア化粧品に強いといえます。カネボウは、感性が大切なメイクアップ化粧品に強いことで知られています。それを支える社風として、後者は伝統的に家族意識が強いといわれています。(http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081700155/082100002/?P=2) 統合により、社風の違う双方が、それぞれの論理性と感性の強みをうまく活かせるかが、化粧品事業躍進の課題といえそうです。

 

(出典)

花王株式会社 2017年6月30日 ニュースリリース  http://www.kao.com/jp/corporate/news/2017/20170630-001/

日本経済新聞「花王・カネボウ、販社統合 売り場作り一体」2017年7月1日 https://www.nikkei.com/article/DGKKASDZ30HYV_Q7A630C1TJ2000/

日本経済新聞「販売子会社を再編 カネボウとの融合進める」2015年9月24日 https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ24HWI_U5A920C1TJC000/

日本経済新聞「花王、カネボウを事実上吸収 研究・生産部門統合」2013年10月8日 https://www.nikkei.com/article/DGXNASDC0800G_Y3A001C1EA1000/

日経ビジネス「カネボウ破綻、絶望からの経営訓」 2017年8月22日  http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081700155/082100002/?P=2

Business Journal「カネボウ」ブランドは消えるのか?花王による“遅過ぎた”事業統合の舞台裏」2013年11月7日 http://biz-journal.jp/2013/11/post_3280.html

 

花王の財務分析

最後に花王の財務分析をしたいと思います。下に花王グループ全体の財務表を掲げます。

 

ここでは3つに絞って述べたいと思います。

 

売上は堅調に推移している

2013年においては海外の景気が悪く、その影響を受けたため思ったより伸びませんでした。しかし、その後は、安定的に推移しております。

 

高いROE

花王のROEは群を抜いています。一般に8%が目標とされる中、2016年度は18.6%と驚異的な数値を出しました。これは自社株買い等によるROE操作ではなく、純利益が年を追うごとに驚異的に伸びている結果といえます (http://diamond.jp/articles/-/87087)。したがって、その数値は健全な経営に裏付けられたものといえるでしょう。(詳しくはROEの意味とは? 計算式で解説! CFOの必須科目、ROE経営が注目されている理由とは?」をご覧ください)

 

花王で特徴的なのは営業利益率の高さである

その理由としては、

1.売上に対する販売促進費・広告費が低い

2.研究開発費に関しては、原料からの一貫生産体制をとっている

ということが考えられます。

 

花王、ビューティーケア事業の財務分析

参考までに、花王株式会社の有価証券報告書を基に作成した、花王のビューティケア事業の売上と営業利益を掲げておきます。

 

 

売上の伸びは、ここ1~2年横ばいとなっておりますが、営業利益は、急速に伸びているのがわかります。2016年は2012年と比較すると実に2倍以上の伸びとなっております。

 

以上みてきたように、花王のグループ全体としての業績は健全といえます。しかし、澤田道隆社長によると、化粧品事業には強い危機感を持っており、今後は、「カネボウ」と「ソフィーナ」の2大ブランドを軸に、当該事業をグループ全体の牽引役に育てるとしております。前述したように、この2つのブランドの誕生背景や企業文化、生産販売体制等は元来かなり違っており、今後は、このルーツの異なるブランドとその支援体制をいかに衝突させることなく、補完的に融合していくかが課題といえるでしょう。

 

結論

以上、シリーズで化粧品業界について論じてきました。化粧品業界は老舗ブランドも広く普及しておりますが、新規参入も多く、大手といえども、安泰ではいられません。実際、花王の主力ブランドであるソフィーナは、高い技術力で生み出されたものであるがゆえに、新技術を使った製品が次々と登場してくれば、相対的に埋没してしまう可能性も否定できません。

 

その花王は、カネボウを買収しましたが、それによる相乗効果はまだあまり見られておりません。しかし、花王は急速に組織的統合を進めており、カネボウのトップには、生え抜きの夏坂真澄氏も据えておりますので、やがてはその効果もあらわれるかもしれません。どのような結果となるにせよ、今までの半独立的な協力連携パートナーシップから、双方の社員が一体感を共有するフェーローシップへと移行していくものと思われます。そして、花王は全体として18.6%というROEの数値に表れている通り、利益を急速に伸ばしており、グループとしての経営は安定しているといってよいでしょう。

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス
 

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
エスネットワークスは、「経営者の視点でニーズを掴み、経営者の視点で課題を解決し続ける、最強パートナー」を実現すべく、成長し続けています。
 

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