TUNE-UP by another life.「第6回:フリーランスは本当に自由なのか?」
これからの時代を、自分が生きたいように生き抜くためのコラム「TUNE-UP」。人生経験のシェアリングサービス「another life.」が提供する様々な人生のパーツを組み立て、自分らしいキャリアや働き方を考えるキッカケを提供します。
第6回のテーマは、「フリーランスは本当に自由なのか?」。
働き方改革が叫ばれる中、会社で生じる残業や、人間関係のストレスから解放されたいと考えたとき、フリーランスという働き方はとても魅力的に見えるかもしれません。
・時間や場所に縛られない自由な働き方に憧れている
・育児や介護で忙しく、会社勤めができる状況ではないが、空いた時間を使って働きたい
・キャリアアップを考えると、会社を辞めた方が成長できるのではないか
こんな考えが頭をかすめたことがある方にとっては、フリーランスという働き方はベストな選択肢になり得るかもしれません。
自分で仕事量を調節できて、どこでも働くことができるというポジティブなイメージが強いフリーランス。another life.の人生インタビューの中から、フリーランスとして働いた経験を持つ方の具体的な事例をもとに、会社に属さずに働くということについて考えていきます。
企業で働くのは、ベストな選択ですか?
「企業で働く」と聞いて、どんなイメージが浮かぶでしょうか。毎日満員電車に揺られ、仕事を選ぶことはできず、残業もなかなか減らない。そんなネガティブなイメージが浮かぶのであれば、一度立ち止まってキャリアを考え直すのもいいかもしれません。あなたの理想のキャリアは、会社でしか実現できないのでしょうか。
新卒採用で安定した企業に入り、定年まで勤め上げるのが「望ましい人生」とされてきた日本。そんな文化の中で育ってきた私たちですが、その体制が今まさに崩れつつあります。終身雇用制の崩壊や、長時間労働問題、副業解禁…キャリアを取り巻く環境が変わる今、フリーランスという働き方はあなたにとって価値のある選択になり得るでしょうか?
まずは、企業で働いていたお二人がどのような背景でフリーランスへとキャリアチェンジを遂げたのか、その理由や背景を追っていきます。
「父に会いに行きやすい環境を作る」
篠原 孝明さん(IT企業→フリーランスWebデザイナー/カメラマンへの転身)
お兄さんの影響で、中学時代から経営者のセミナーに参加し、ビジネスへの強い関心を持っていた篠原さん。新卒でAppleに就職し、やりがいを持って働いていたところに、転機が訪れました。
“楽しく仕事をしていたある時、父の誕生日に、突然メッセージが来て、父ががんを患い余命3ヶ月と宣告されたということを知ったんです。”
“正直、冗談だろうと思いました。しかし、すぐに受け入れなくてはと気持ちを改め、3ヶ月の間にできることをしようと決め、会社の退職を決めました。父に会いに行きやすい環境を作るための選択だったので、迷いはありませんでした。”
“会社は辞めたものの、退職した時から個人で仕事は続けると決めていました。私が自立して働く姿を父に見せることも、3ヶ月の間にすることに含めていたんです。”
(another life.記事より)
その後、お父さんの病状は奇跡的に回復していきますが、篠原さんは「最短速度で成長する」ために、フリーランスとしてキャリアを積んでいきます。
篠原さんのケースでは「ご家族の病気」がきっかけになりましたが、「家族の時間をもっと大切にしたい」と思う方は少なくないのではないでしょうか。人生における要素は、仕事がだけでは限りません。家族や趣味を最優先しながら生活するために、フリーランスという働き方は選択肢のひとつになるかもしれません。
「誰かに選んでもらえるプロフェッショナルへ」
高野 詩織さん(制作会社→フリーライターへの転身)
社会人3年目で、出産のため新卒入社した会社を退職した高野さん。産後3ヶ月で、楽しんで働く同級生達を見て感じた「このままでいいのか?」という焦りから、フリーランスとして制作の仕事を始めました。2年後、より深い「人とのつながり」を求めて会社勤めを再開しますが、組織で働くからこその悩みにぶつかるようになります。
“パートという立場で発言や行動が制限されたり、何かあると「高野さんはお母さんだから」と言われたりすることに、もどかしさを感じていました。
「このままここにいていいのだろうか」とじっくり考え、自分の時間を全て自分でコントロールできるようにしようと、もう一度フリーランスとして働くことに決めました。子どもが生まれた直後と比べて、自分の中でフリーランスに対する考え方が変わった部分もありましたね。子どもが生まれた直後は、お小遣い稼ぎや、会社で働くほどの時間的な余裕は持てないけど社会とつながりを持ちたいという理由で、フリーランスで仕事をやりました。フリーランスを一度やった後に、再び組織で働いてみて、組織に属さなくても誰かに選んでもらえるプロフェッショナルとして、フリーランスで働きたいと感じました。”
(another life.記事より)
人生で2度フリーランスになった高野さん。1度目は産後の焦りから、2度目は「自分の実力で選んでもらいたい」という想いからフリーランスになりました。ライフステージや、そのときのモチベーションによって、フリーランスという働き方が最良の選択になるかどうかは変わってくるのかもしれません。
フリーランスのメリット・デメリット
いざフリーランスとして働き始めると、思い描いていた働き方は実現されるのでしょうか。実際に働いてみないと見えないものがあります。家族や趣味のための時間や、個人としての成長といった、様々な目的を持ってフリーランスになったお二人は、実際に働き始めてどんなことを感じるようになったのでしょうか。
「自分一人で行うにはスピードが遅い」篠原 孝明さん
“より最短速度で成長しようとフリーランスとして試行錯誤する日々を過ごしていました。
自身を追い込むために家も引き払い、風呂なし・トイレ共同のワンルームアパートをオフィス兼自宅として引っ越し、とにかくストイックに努力を続けました。楽な環境にいたら怠けてしまうという危機感もありましたし、先を行く兄に近づきたいという気持ちもありました。”
“自分の若さにも期限があると思い、駆け抜けるように毎日を過ごし、少しずつ壁を乗り越える自信を積み重ねていきました。
そんな背景もあり、段々と仕事の幅は広がっていったものの、次第に、元々抱いていた「世の中に新しい価値を提供したい」という思いから、受託ではなく、自分のサービスを社会に出していきたいと考えるようになったんです。
しかし、全てを自分一人で行うにはスピードが遅い。そこで、優秀な仲間とサービス作りができる環境がないか探していると、グリーという会社でメディア企画ディレクターの募集があることを知りました。環境の魅力に惹かれ、22歳にしてグリーへの転職を決めました。”
(another life.記事より)
「誰でもできる時代に、自分だからできる仕事を」高野 詩織さん
“取材をして、自分の書いた記事が世の中に出て、記事を読んだ方から反響があったり、取材対象の方が喜んでくれる。「また、何かあったら高野さんに頼むね」と言われると、本当に嬉しい。人を対象にした取材やライティングにやりがいを見いだしました。”
“独立してすぐの頃は、不安も大きかったですね。周りから「業界を舐めている」と言われたこともありました。今は誰でも発信ができる時代、個人で仕事をしていく力があるのか、と。それでも、そういった時代だからこそ、「この人と仕事がしたい」と思ってもらえる人間になりたいと思うんです。取材される方も気づいていないような、魅力を上手く表現したい、伝えたい。ライターの仕事という枠にとらわれずに、自分の表現の力で、社会に伝えていくお手伝いができればと考えています。”
(another life.記事より)
フリーランスとしてのキャリアを積むことにした高野さんと、再び会社勤めに戻った篠原さん。自分のキャリアや、人生で実現したいことを見つめ直した上で、企業とフリーランスどちらの働き方が最適なのかを見極めた選択でした。
フリーランスを続ける人も、企業へ戻る人も
フリーランスは本当に自由なのか?というテーマで、実際にフリーランスになった人の人生インタビューを追ってみると、確かに自由な一方で、必ずしも最適な選択ではないことがわかります。
例えば、篠原さんの場合は「世の中に新しい価値を提供したい」という目的に対して、自分一人よりもチームで取り組んだ方が効率が良いと考えました。目的の規模感が個人の能力を大きく超える場合は企業というフィールドの方が適しているのかもしれません。
個人の実力が評価基準となるフリーランスで通用する力は、企業の中にいても重宝されることは事実です。企業の中でも、フリーランスでも、「求められる力」を伸ばしていくのが大切になっていくでしょう。
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執筆者:another life.編集部