TUNE-UP by another life.「第5回:私にできる地方創生。実際どうなの?地域おこし協力隊のリアル」
これからの時代を、自分が生きたいように生き抜くためのコラム「TUNE-UP」。人生経験のシェアリングサービス「another life.」が提供する様々な人生のパーツを組み立て、自分らしいキャリアや働き方を考えるキッカケを提供します。
第5回のテーマは、「実際どうなの?地域おこし協力隊のリアル」。
地方創生が叫ばれる昨今、人口が少なくなっている地域に移住を促す施策が政府からも打ち出されています。地方のゆったりした雰囲気に惹かれる一方で、移住先で新たな収入源の確保が不安で一歩を踏み出せないという方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
実は、そんな不安を軽くする制度があります。「地域おこし協力隊」という言葉をご存知でしょうか?おおむね1年以上3年以下の期間で、地方自治体の委嘱を受け、地域で生活し、地域協力活動を行い、その報酬を国から支給してもらえるという制度です。
生活の基盤が整うまで補助があれば、移住への一歩を踏み出しやすくなりますよね。実際にこの制度を使った人はどんな経緯で移住を決意し、どのような暮らしを送っているのでしょうか。
・地方の暮らしに興味があるけど、どの地域が良いのかわからない
・移住したいけど、地方でどんな仕事ができるのか、まだイメージできない
・都会よりもつながりが強い地元のコミュニティへ溶け込めるのか不安
移住にまつわるこんな疑問について、another life.の人生インタビューの中にある具体的な事例をもとに考えていきます。
Uターン?Iターン?、どうやって住む場所を選ぶ?
「地方へ引っ越したい」と思ったはいいもの、いざ移住先を選ぶとなると様々な判断基準があります。慣れ親しんだ故郷や、人々の距離感が近い町、海が近い町、食べ物が美味しい地域など、移住の目的や町の魅力はそれぞれ違い、ひとつを選ぶのはなかなか難しいですよね。
今まで移住してきた人たちは、様々な選択肢の中からどのようにして移住先を選んできたのでしょうか?
自分の理想の暮らしは地方にあると気づき、地域おこし協力隊としての活動を始めたお二人の人生インタビューをご紹介します。
「一緒に仕事をしてみたいと思える人がたくさんいた」
森 弘行さん(東京都→山梨県 地域おこし協力隊→NPOスタッフ)
エンジニアとして企業に勤めるものの、「人の顔が見えない、工程管理表で人をとらえるような働き方」に違和感を覚えるようになった森さん。「人のつながりの希薄化」に対する問題意識が高まる中で、スタディツアーで地方に行く機会が訪れます。実際に現地で暮らす方と接する中で、「個人の自由な時間」「人と人とのつながり」「自然との共存」という文化が根付く地方の暮らしに本質的な幸せを見出すようになりました。
”そんな折、「地域おこし協力隊」という総務省の取り組みのフェアで、山梨県小菅村を知ったんです。東京からそこまで離れていないにもかかわらず、もともと漠然と考えていた「家の隣が家でないくらいの田舎」という条件を満たしていて、何より、一緒に仕事をしてみたいと思える人がたくさんいたんですよね。”
(another life.記事より)
移住の決め手になったのは「人」。「人とのつながり」や「協力して成し遂げること」を大切にする森さんにとって、共に生活する人々との相性はとても大切な要素でした。
「ここでなら、自分たちにできることがあるんじゃないか」
宮川 真伊さん(広島県呉市地域おこし協力隊・島の魅力の発信)
お笑い番組のAD、ホテルスタッフ、IT企業など、東京で様々な仕事を経験した宮川さん。旦那さまからの「どうせ働くんだったら、やりたいことをしなよ」という言葉がきっかけで、「好きなことをやる人生」について改めて考えるようになります。そんな中、子育てのために地方への移住を検討し始め、移住先でのキャリアのイメージを掴めるまで、地域おこし協力隊の制度を利用することに決めました。
“初めて大崎下島を訪れた時、目の前に広がる瀬戸内海の風景に感動しました。「日本にエーゲ海みたいなところがあるんだ」とびっくりしましたね。”
“話を聞いていると、島には江戸時代から明治・大正・昭和の建物や豊かな自然など、良い資源があるのに、それを活かせていないことに「もったいない」と感じましたね。
同じ広島県内の隣の島も候補の一つでした。ただ、その島は移住者も多く、既に成り立っているような印象でした。それに対して、大崎下島は「ここでなら、自分たちにできることがあるんじゃないか」と思ったんです。”
(another life.記事より)
移住の決め手になったのは「自分が貢献できる可能性の大きさ」でした。様々な職業を経験した宮川さんだからこそ伸び代の大きさに惹かれたのかもしれません。「地方の役に立ちたい」という気持ちが大きい人は、こんな基準で移住先を選ぶのもひとつの洗濯かもしれませんね。
理想の暮らしは田舎にあるの?
いざ地方で暮らし始めたとき、思い描いていた暮らしは実現されるのでしょうか。人とのつながりや、地方の役に立ちたいという想い、子育ての環境など、求めていたものと現実のギャップは、実際に暮らしてみないことには見えないものです。
理想を求めて移住を決意したお二人は、実際に暮らし始めてどんなことを感じるようになったのでしょうか。
「欲しかったものを見つけた感覚」森 弘行さん
“小菅村は人口が700人程度で、コンビニはもちろんスーパーも近くにないんです。ところが、イメージ通りの「お互い様」の文化があり、ご近所さんから色々な物をいただけるんですよね。「やっぱりそうか!」と、なんだか欲しかったものを見つけた感覚でした。”
“特に、私が大事にしている「人と人とのつながり」や「お互い様」といった文化を、都市の「自己責任」の環境の中で育むのは難しいと思うんです。だから、地域の活動を通して、そういった価値観も含めて認められるような、多様な生き方を受け入れる「受け皿」を作りたいと考えているんですよね。
都市での生き方や働き方を否定するつもりはないんです。色々な生き方があって良いと思うんですよね。そして、その一つの受け入れ先として農山村があっても良いと思うんです。”
(another life.記事より)
「人とのつながり」という、一番大事にしたかったものを移住によって手にいれることができた森さん。また、スタッフとして関わるようになったNPO法人の活動を通して、農村の景観を守り文化を継承していきたいという想いが強まりました。
「自分のやりたいことがはっきりしてきた」宮川 真伊さん
“「何かしなければいけない」という制限が少ないため、自分のやってきたことや、島から求められていることをマッチングした仕事をしています。
最近、自分のやりたいことがはっきりしてきた気がします。私がしたいのは、これまでの経験を活かして、島の魅力を発信することだったんです。英語ができて、テレビやWebで発信する仕事の経験があって、移住者として島に必要な外の視点も持っています。
地域おこし協力隊としての活動は3年で終わりますが、その後もこの島に住み続け、家庭を築きながら一つ一つ実現させていきたいです。
思いついたことをすぐに形にできるのが田舎の良さなので、これからも色々挑戦していきたいですね。”
(another life.記事より)
移住するまで見えていなかった「自分のやりたいこと」がクリアになったという宮川さん。地域おこし協力隊をはじめの一歩として、新しい道を歩み始めました。
「一歩目の選択肢」としての地域おこし協力隊
地域おこし協力隊は、持続的な移住を前提として援助を受ける制度です。だからこそ、協力隊になる前に、その地域と自分の相性をある程度見極める必要はあります。
しかし、「地方の暮らしに興味があるけれど自分がどんな仕事をできるのか具体的なイメージがつかない」という不安を解消するには、協力隊として移住をスタートするのはとても効果的な選択ではないでしょうか。
どんなことも、最初の一歩を踏み出すのが一番ハードルが高いものです。お二人が移住後に新しい活動を始めたように、実際に暮らしてみて初めて見えるものがあります。そこから、地方における自分のキャリアを現地で考えてみるのも良いかもしれません。
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執筆者:another life.編集部