2つの戦略で成長する「海外ユニクロ事業」、ファストリを最高益に導く
目次
ファストリ、海外ユニクロが牽引で最高益
ユニクロは中国や東南アジアにも人気があることをご存知でしょうか。
2017年10月13日の日本経済新聞朝刊に「ファストリ最高益、前期1192億円、2期ぶり、海外事業伸びる」という株式会社ファーストリテイリング(以下、ファーストリテイリング)についての記事が掲載されました。
前回(8月18日)の記事「ファーストリテイリング、売上減少に歯止め 急成長するGUと海外ユニクロを柱に売上高3兆円へ」ではファーストリテイリングの概要をユニクロとジーユーを中心に論じました。
今回はファーストリテイリングの中でも海外ユニクロ事業に焦点を当て、なぜ当該事業がファーストリテイリングの利益を牽引する要因になるのかを解説してみたいと思います。
海外ユニクロ事業の概要 約8割はアジアで展開
ファーストリテイリングの事業系統はユニクロ事業とグローバルブランド事業があります。ユニクロ事業の中に、国内ユニクロ事業と海外ユニクロ事業があり、その中の約11社は海外ユニクロ事業の連結子会社です。さらに下の表をみると、海外ユニクロ事業の連結子会社の約83%はアジアにあります。
出所:株式会社ファーストリテイリング 「有価証券報告書 事業の内容」を基に筆者作成
[http://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/yuho201608.pdf]
海外ユニクロ事業の2つの成長要因
海外ユニクロ事業が成長する主な要因は以下に説明する「大量出店戦略」と「利益確保戦略」の2つの戦略だと考えます。
海外ユニクロ事業、「大量出店戦略」で成長
まず、ユニクロの海外事業と国内事業の売上と店舗数の推移をみてみましょう。
出所:株式会社ファーストリテイリング 「グループ事業別業績」を基に筆者作成
[http://www.fastretailing.com/jp/ir/financial/segment_qtr.html]
図1をみると、2013年から2017年にかけて、海外ユニクロ事業の店舗数は増加しており、それに応じて売上収益も成長していることが読み取れます。
しかし、図2には国内ユニクロ事業において、売上収益が年々増加する一方、店舗数は減少しています。つまり、海外では店舗が増えることで集客率が増えているといえそうです。
逆に、国内ユニクロ事業の成長要因は店舗数ではなく、他の要因である価格戦略やEコマース事業ではないかと思われます。
海外ユニクロ事業、中国に年間約100店舗の大量出店
出所:株式会社ファーストリテイリング 「グループ店舗一覧」を基に筆者作成
[http://www.fastretailing.com/jp/group/shoplist/]
さらに図3によると、海外ユニクロ事業の59%の店舗はグレーターチャイナ(中国・台湾・香港)にあります。つまり、主な市場は中国と東南アジアだといえます。中国では年間100店程度の大量出店を続けています。
海外ユニクロ事業、「利益確保戦略」で成長―週単位の店舗管理制度
中国では週次単位で損益の管理制度を導入し始めました。週次単位で管理することは小売業では珍しいです。中国における一般の小売業では月次単位なので、週次単位にすると短い期間で決済をしなければならず管理コストや手間がかかるというデメリットがあります。
しかしユニクロの場合、週次単位の管理にはメリットがあります。ユニクロにとって新しい市場や国に店舗を展開する時、現地の需要を明確に読み取ることは決して簡単ではありません。
しかし、ユニクロは週1回に新しい製品を入れ替える販売戦略を取っているので、損益の管理を週次単位とすることは、毎週の現地の需要を捉えた最適な新しい製品を販売できる点で合理的だと考えられます。
つまり海外ユニクロ事業では、たとえ管理コストが上昇するとしても、海外の消費者のニーズの変化と在庫のリスクにうまく対応できる週単位管理は1つの賢明な方策といえそうです。
参考:日本経済新聞「ユニクロ 海外店舗の損益、週単位で まず中国で導入」2017年8月19日[https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07IU4_Y7A810C1TJ1000/]
今後の海外ユニクロ事業の課題
海外ユニクロ事業の積極的出店と収益性向上の両立
海外ユニクロ事業の出店数を高めると同時に、将来的に当該事業の売上高1兆円を目指すには、収益性を確保して向上させなければいけません。また、ジーユー(GU)などのブランドはファーストリテイリンググループの相乗効果を最大限に生かし、事業拡大をするべきでしょう。
海外ユニクロ事業に悪影響を与える6つのリスク
海外ユニクロ事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があるリスクはいくつか存在します。ファーストリテイリングの第55期有価証券報告書によると「販売する商品が現地の市場ニーズやトレンドに合致しない」「法規制の変更」「景気変動」「政治・経済的混乱」「為替変動」「海外人材育成が円滑に進行しない」という6つのリスクが挙げられています。ファーストリテイリングはこうした変化に対しての柔軟な対策が不可欠でしょう。
ファストリ、海外ユニクロ事業の成長を課題に
海外におけるユニクロ事業の成長は、ファーストリテイリングの業績を牽引する要因だと考えます。国内事業より海外事業の成長性が高いことで、今後海外事業が国内事業を逆転する可能性があります。世界の他のファストファッションブランド(ZARA、H&Mなど)との競争、国内事業の業績の向上は今後のファーストリテイリングおよびユニクロの課題ではないでしょうか。
執筆者:パイルズガレージ編集部
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
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