熾烈な競争を繰り広げる化粧品業界の分析

熾烈な競争を繰り広げる化粧品業界の分析

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異業種参入、インバウンド増加、国内市場縮小、競争激しい化粧品業界

最近の化粧品業界は異業種の参入が相次いでおります。味の素、富士フイルム、サントリー、第一三共、江崎グリコがよく知られております。これらの企業は、皆一定の成果を上げており、成功事例といえるでしょう。

 

その一方で、化粧品業界は国内市場規模が伸び悩む中、インバウンドの増加も見られ拡大しておりますが、やがては頭打ちになるのではという懸念も消えません。資生堂を筆頭に大手の化粧品メーカーは、海外進出も盛んに行い、生存競争を繰り広げています。

 

今回はそんな熾烈な競争が繰り広げられている化粧品業界について調べていきたいと思います。

 

化粧品業界概要

まずは業界について簡単にご紹介します。まず化粧品メーカーは大まかに言って、自社で研究、製造、販売を行うメーカーとそれらの工程のいくつかを担う多数の企業が存在しており、前者は資生堂、花王、カネボウ、コーセー等があり、後者としては原材料メーカーや受託製造メーカーがあります。

 

化粧品の定義

化粧品というのは、医薬品や医薬部外品等と紛らわしいこともあり、おおまかな定義が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」により与えられております。まずは化粧品とは何かというところから、説明させていただきます。

 

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」によると、「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。(同法第二条第三項)

 

医薬品とは、治療を主たる目的としており、含まれている有効成分の効能は厚生労働省により認められています。医薬部外品とは、効果があると認可された有効成分を配合しており、その効果や効能について、医薬品にくらべて緩和されておりますが、直接的な表現で表示することが許可されております。薬用化粧品も医薬部外品に含まれます。化粧品は法律の定義を読めば分かりますが、美容を主たる目的としています。いわゆる有効成分の含有は不要であり、それゆえ全成分表示が義務付けられてもいます。効能や効果については医薬部外品より更に緩和されており、また、医薬部外品では許される直接的な表現で、化粧品の効能、効果を表示することはできません。

 

化粧品の種類

化粧品にはいろいろな種類がありますが、一般的なものは以下のものです。

 

化粧品販売流通モデル

化粧品の消費者に届くまでの流通経路は以下のように5つに分類できます。

 

一般品とは、化粧品メーカーが、資本関係の無い一般の卸売業者に製品を販売流通し、一般の小売業者が仕入れて販売する形態をとる商品で、価格設定はそれぞれの業者の任意となっております。

 

一方、制度品は、化粧品メーカーが直接契約を結んだ小売業者のみが販売し、したがって小売価格設定もメーカーが管理します。その際、メーカーは小売店に販売員を派遣し、顧客に対して対面販売することになっております。

 

訪問販売通信販売は、読んで字のごとく訪問や通信で販売するもので店頭販売ではありません。

 

業務用品は、一般品の流通形態と同様であり、理容院や美容院、エステティックサロンで使用される業務用化粧品のことです。

 

(出典)

 

化粧品業界、主要プレイヤーの関係

次に化粧品メーカーの関係図を下に掲載します。

 

化粧品業界の特徴

化粧品業界の特徴を以下4つにまとめました。

 

(出典)梅本博史「化粧品業界の動向とカラクリがよ~くわかる本」 (2016)

 

化粧品業界の特徴①「原価が安く、販売促進費が高い」

だいたい原価率は約20%で、販売促進費(広告宣伝費など)も20%ほどになります。なぜ高くなるかというと、化粧品業界には競合他社が多く、また顧客はブランドに対する信頼とイメージによって購買決定をする傾向があります。したがって、売るためのCMなどの宣伝だけでなく、ブランドイメージの維持向上のためにも販売促進費が高くなります。

 

化粧品業界の特徴②「制度品メーカー(資生堂、花王、コーセー)は、直接子売店と契約するチェーンストア契約、販売制度などがある」

チェーンストア契約とは先述した制度品販売の際、化粧品メーカーが子売店と契約して販売するものです。

 

特徴としてはコーナー制度、美容部員制度やサンプルの提供などをメーカー負担で行います。販売制度とは、自社内で問屋の働きをするものです。これにより流通支配力を強めていきました。

 

化粧品業界の特徴③「景気に左右されにくい」

景気が良ければ高級化粧品やその他の需要も増えます。また不景気になったとしても化粧品の売り上げは急には下がりません。
なぜかといいますと、化粧品は食料品と同じように女性にとっては生活必需品と同様に重要であり、価格が安いものにランクを下げることがあっても買わないということはあまりありません。また不景気であれば、これまでに家庭にいた主婦が働きに出るということもあり、メイクをする人が増えたりもします。よって化粧品業界はあまり景気に影響を受けないといえます。

 

化粧品業界の特徴④「大手化粧品会社は、アジア圏を中心にした海外市場に販売網を拡大」

昨今の中国人観光客の「爆買い」があり、売り上げは伸びているものの国内の化粧品市場は伸び悩んでいる中、日本のブランド力、これまで蓄積してきた研究開発を生かせる成長市場であるアジアに大手メーカーは販売網を拡大しています。

 

化粧品業界の背景・歴史 「美容大国」日本の歩み

日本の化粧品業界が大きく花開き、たくさんの化粧品メーカーが出現し始めるのは、明治時代からです。文明開化を近代的な化粧品が広まり化粧品業界は活気づきました。明治時代に誕生し、今も残るメーカーは資生堂、桃屋順天館、ライオンなどで、大正時代、そして昭和に入ってからも一向に衰えず、ウテナ、マンダム、ポーラ化粧品本舗なども全て戦前に生まれた化粧品メーカーです。

 

やがて日本は戦争に突入するが、化粧品マーケットが縮小したのは、戦火が激しくなった1943年から3年間だけといわれております。物資の供給が困難になったためで、戦争が終わり、平和な日々が訪れ始めると化粧品市場は活気を取り戻しました。

 

戦争が終わり、日本が高度経済成長時代に突入すると、化粧品マーケットは飛躍的に伸びていきました。70年代から80年代には、メーカーは毎シーズンごとに旬の女優やタレントを起用しました。CMソングと共に流行をアピールし、大衆が一斉に一つのトレンドになびいた時代でした。80年代後半から90年代は、化粧品の機能や効果、成分を重視する女性が増え始め、今も続く機能性化粧品の時代が幕を開けました。

 

バブル経済が崩壊すると、低価格志向が広がり、低価格で高価な制度品を扱うメーカーには厳しい時代が訪れました。それにより、資生堂や現在花王に買収されたカネボウ化粧品は、一般品販売にも力を入れるようになりました。

 

2000年代に入ると、自然派化粧品の人気はさらに上昇し、本格的普及期に入りました。しかし、機能や効果を追い求める志向は依然衰えませんでした。一方では、できるだけ肌に優しい化粧品を使いたいというニーズがあり、もう一方では美白や保湿に効果の高い化粧品にこだわるニーズがあります。また化粧品マーケットをひとつのキーワードでくくるのが難しくなったのは、美白に保湿、アンチエイジング、オーガニックなどと多様化した時代がやってきたためといえます。

 

さらには志向が多様化しただけではなく、メーカーの顔ぶれも変わり、異業種からの参入が増え、インターネットを舞台にしたネット通販専業の新興化粧品メーカーも多数出現しました。

 

(出典)

  • 業界地図2016年版
  • 厳莉蘭 「化粧品産業の業界構造分析ーマイケル・ポーターの五つの競争要因の分析とともにー」 現代社会文化研究 2007年12月 No.40

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
エスネットワークスは、「経営者の視点でニーズを掴み、経営者の視点で課題を解決し続ける、最強パートナー」を実現すべく、成長し続けています。

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