日本郵船の業績回復の背景とは? 海運業界の仕組みから分かりやすく理解

日本郵船の業績回復の背景とは? 海運業界の仕組みから分かりやすく理解

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日本郵船の経常損益、前年同期236億円赤字から150億円黒字に復調

2017年10月12日の日本経済新聞で、日本郵船の2017年4~9月期の連結経常損益が150億円程度の黒字になる模様だと報じられました。前年同期は236億円の赤字だっただけに、今期の復調の理由が気になります。今回は、日本郵船の復調の背景に迫ります。

 

(参考)
日本経済新聞「郵船の経常黒字150億円 4~9月、コンテナ船復調 」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22128010R11C17A0DTA000/

 

日本郵船の概要

まずは、日本郵船とはどんな企業なのかを見ていきましょう。

 

日本郵船の基本情報

会社名:日本郵船株式会社 Nippon Yusen Kabushiki Kaisha (Nippon Yusen Kaisha、またはNYK Line)

代表取締役社長:内藤 忠顕

創立:明治18年(1885年)9月29日

資本金:1,443億円

事業内容:一般貨物輸送事業(定期船事業、航空運送事業、物流事業)、不定期専用船事業、その他事業(不動産業、その他の事業)

上場取引所:東京(第1部)、名古屋(第1部)

従業員:35,935名

 

(参考)
日本郵船株式会社「会社概要」
http://www.nyk.com/profile/profile/profile/

日本郵船株式会社「日本郵船について」
http://www.nyk.com/recruit/2018/company/about.html

 

日本郵船、海運業が主な事業

売上高の65%を海運業(定期船・不定期船の運航)が占めておりますが、陸路や空路での輸送業も行っています。また、売上高に占める割合はごくわずかながら、不動産の賃貸・管理・販売業も行っています。

 

(参考)
日本郵船株式会社「第130期 有価証券報告書」
http://www.nyk.com/release/blank/yu/__icsFiles/afieldfile/2017/06/22/yuhou.pdf

日本郵船株式会社「ファクトブック2017【Ⅱ】」
http://www.nyk.com/ir/library/fact02/pdf/2017_factbook02_02.pdf

 

海運業を分かりやすく解説

売上高の65%を占めるように日本郵船は海運業を主に行う企業です。日本郵船の業績復調を解説する前に、ここで海運業について分かりやすく解説します。

 

海運業とは

海運業とは、船舶を用いて旅客や貨物を海上輸送する事業をいいます。

 

海運業は運航領域によって、国内間の海上輸送を行う内航海運と国際間の海上輸送を行う外航海運に分類されます。ご存じの通り、日本は主要資源の多くを輸入に頼っており、それらは船で運ばれてくるので海運業者は私たちの生活になくてはならない存在なのです。

 

海運業者を取り巻く主なプレーヤー

海運業者を取り巻く主なプレーヤーは、造船会社船主(せんしゅ、ふなぬし)、荷主(にぬし)です。

 

  • 造船会社は、船主の発注を受け、船舶を建造します。
  • 海運業者は、荷主からの需要に応じて船主が所有する船舶を借り、荷主の荷物を運びます。
  • 海運業者荷主船主である場合もあります。
  • 海運業者によって運ばれた荷物は、荷主によって製造・加工・運送され、最終消費者のもとに届きます。

 

船の種類 貨物によって様々な船を使用

荷主から引き受ける貨物は多種多様です。貨物の特性に合わせて効率よく、品質を損なわずに運ぶために様々な船があります。

 

油送船(オイルタンカー)

油送船(オイルタンカー)は石油を運びます。主な荷主は石油会社や商社、化学品メーカーです。

 

ばら積み船(バルク船・バルカー)

ばら積み船(バルク船・バルカー)は鉄鉱石、石炭、木材チップ、穀物、セメントなどを梱包せずに大量にそのまま運びます。主な荷主は電力会社、製鉄メーカー、製糸会社、食品メーカーです。

 

LNG船

LNG船液化天然ガスを運びます。主な荷主は電力会社やガス会社です。

 

コンテナ船

コンテナ船は材料、部品、完成品、一般消費財等あらゆるものを運びます。衣類、日用品、家電など多岐にわたります。主な荷主はメーカーや商社です。

 

自動車船

自動車船は完成した自動車を運びます。主な荷主は自動車・建機メーカーです。

 

(参考)株式会社商船三井「海運業界のしくみ」http://www.mol.co.jp/saiyou/shipping_construction.html

 

海運会社の経営規模を表す指標「コンテナ船の船腹量(TEU)」

経営規模を示す指標として海運業界で一般的なのが、コンテナ船の積載容量(船腹量)です。海運会社において海上コンテナの輸送量が圧倒的に多く、また規格が万国共通であるため企業間の比較をしやすいからです。船腹量は「TEU」(1TEU=20フィートコンテナ1個に相当)という貨物容量の単位で表されます。

 

世界の海運各社のコンテナ船 運航船腹量(TEU)ランキング

 

上記の図は、世界の海運各社のコンテナ船運航船腹量(TEU)の比較です。

 

1位はデンマークのマースクライン、2位はスイスのメディテラニアン、3位はフランスのCMA-CGMです。日本郵船、三井商船、川崎汽船との合同会社(詳細は後述します)は6位です。

 

2016年12月には、首位のマースクラインが8位のハンブルク・スード(ドイツ)を買収することを発表しました。

 

(参考)
日本経済新聞「海運最大手マースク、同業7位の独社買収」
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM01H80_R01C16A2FF1000/

(出典)
日本郵船株式会社「ファクトブック2017【Ⅰ】」
http://www.nyk.com/ir/library/fact01/pdf/2017_factbook01_04.pdf

 

日本郵船の業績回復

海運大手3社の業績推移

 

 

日本郵船は2018年3月期第1四半期に、増収増益を達成しました。前年同期の当期純利益は128億円の赤字でしたが、今期は54億円の黒字と大幅な増益です。

 

他の海運大手の業績も上向きました。各社とも四半期ごとの売上高は上昇傾向にあり、前年同期と比較すると当期純利益も大きく伸びています。商船三井の当期純利益は前年同期14億円を53億円に伸ばしています。川崎汽船の前年同期の当期純利益は268億円の赤字でしたが、今期は85億円の黒字です。

 

日本郵船の復調の鍵はコンテナ船の荷動き活発化

 

 

出典:3つのグラフすべて、日本郵船株式会社「2018年3月期第1四半期決算説明会資料」
http://www.nyk.com/release/blank/ke/__icsFiles/afieldfile/2017/07/31/20170731j.pdf

 

日本郵船の増収増益の最大の要因は、コンテナ船の荷動きの活発化です。アジアから北米、欧州に向かう荷物が増え、消席率(積載率)は9割を超えました。運賃も堅調に推移しており、価格と数量の両面で業績向上に寄与しました。

 

海運大手3社のコンテナ船事業統合 18年営業開始のコンテナ合同会社とは?

2016年10月31日、日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社が合弁会社を新たに設立し、3社の定期コンテナ船事業を統合することを発表しました。2017年7月7日、持株会社が日本(東京)に設立されたと同時に、事業会社がシンガポールに設立されました。事業運営会社の商号はOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.です。事業会社の地域統括拠点は、香港、シンガポール、英国(ロンドン)、米国(バージニア州リッチモンド)、ブラジル(サンパウロ)に設立予定で、営業開始は2018年4月1日の予定です。出資額は約3,000億円、事業規模は約140万TEUで、世界6位、グローバルシェア約7%に相当します。売上高は約2兆円に上る見通しです。3社はスケールメリットやシステム統合を生かし、年間1,100億円の統合効果を実現できるとしています。

 

(参考)
日本郵船株式会社「定期コンテナ船事業統合の新会社設立に関するお知らせ(その2)」
http://www.nyk.com/news/2017/1188304_1521.html
http://www.nyk.com/news/2017/__icsFiles/afieldfile/2017/07/10/170710.pdf

 

日本郵船株式会社「ファクトブック2017【Ⅱ】」
http://www.nyk.com/ir/library/fact01/pdf/2017_factbook01_04.pdf

 

船舶の供給過剰で再編が進む海運業界

世界的な景気動向に左右されやすい海運業界。海運業界では船舶の供給過剰と言われており、再編が進んでいます。今後も海運業界の同行に注目です。

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部 山城晴香

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
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