CDSスプレッド上昇事例とCDSにみる世界の金融危機

CDSスプレッド上昇事例とCDSにみる世界の金融危機

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CDSとは

信用リスク指標としてのCDS

CDSとは債権の信用リスクに最も敏感に反映するデリバティブであり、CDSの保証料率(詳細は後述)は債務不履行などのクレジッドイベント(清算事由)が発生するリスクを示す指標として扱われています。実際に下記ではCDSの保証料が上昇した事例を紹介しますが、債権の信用リスクが高まっていることを示すためにCDSの保証料率がよく新聞記事で参考にされています。

 

CDSの仕組み

CDSは簡単にいうと債権の保険です。債権が回収できない場合など損失を被る事態になった時にあらかじめCDSを金融機関(保険会社やヘッジファンドなど)から買っておけば、CDSを売ってくれた金融機関が損失額分を補填してくれます。つまり、債権者はCDSを買うことによって債務者の信用リスクをヘッジするということです。また、保険の買い手はリスクヘッジの対価として保険料を支払わなければいけないのと同様に、CDSを買い手はCDSの売り手に対して一定期間(5年が一般的な保証期間)定期的に保証料を支払わなければいけません。

 

CDSの保証料率(=保証料/元本)は保証料率、プレミアム、スプレッドとも呼ばれます。CDS市場では日々、このCDSの保証料率を巡ってCDSが売り買いされるためCDSの保証料率が需給に伴って変動しています。投資家はこの保証料で儲けるためになるべく高い保証料率のCDSを買おうとします。なぜなら例えば、日本国債のCDSの売り手は日本政府が日本国債の債務不履行を一定期間に生じさせなければ、保証料を丸々と儲けることができるからです。

 

一般的にCDSの保証料率は2%が危険水準と言われています。また、社債のCDS保証料は国債のCDS保証料よりも高いことが多くなります。これは社債の利率が国債の利率より高く設定されていることと同じように、一般的に国債よりも社債は信用リスクが高いからです。

 

日本国債のCDS

直近の今年9月29日には日本国債のCDS保証料率が数日で0.4%前後まで急上昇しました。日本国債のCDS保証料率が0.4%まで上昇するのは2016年7月以来の水準で、この要因は政府の財政政策にあると考えらます。衆院の解散が予測されていなかった9月初めまでは日本国債のCDS保証率は0.3%程度でした。しかし、0.4%まで急上昇した直前に政府が消費増税における増収分の一部のみを国債返済に充てるという方針を発表したからです。

 

今回の衆院総選挙では各党の消費増税方針が争点の一つとなっており、与党の自民党は増収分の使途を財政政策と他の政策に分けるという方針を打ち出した結果、日本の財政健全化が遠のいて日本国債がデフォルトに陥るリスクが高まったと考える人が増えたということを示しています。

 

東芝社債のCDS

今年5月9日には、日本の代表的な40社の社債のCDS平均保証料率は期間5年で0.4%であるのに対し、東芝の社債のCDS保証料率は同4%前後と高くなりました。 現在では、いわゆる日米韓連合へ東芝メモリを売却する契約を東芝が締結したことで再建目処はある程度立ったもの、今年の5月にはまだ買収先がまとまってさえいない状況でした。その中で東芝の再建は遠のき、東芝の社債がデフォルトになるリスクが高まったと考える人が増えたといえます。

 

韓国国債のCDS

今年8月11日、韓国国債のCDS保証料が0.69%に上昇しました。これは2016年2月末以来、約1年半ぶりの高い水準ですが要因は地政学リスクの高まりだと考えるのが妥当です。この前の週には北朝鮮がグアムへのミサイル発射計画を検討していることが明らかになったことで、韓国国債のクレジットイベント発生リスクが高まったと考える人が増加したと考えられます。また、同日の中国国債のCDS保証料は0.685%で、約4年3カ月ぶりに韓国国債CDS保証率と中国国債CDS保証率が逆転しました。

 

米国国債のCDS

今年8月14日、米国国債CDSも0.315%と前週末比で0.02%ポイント上昇し、4月20日以来の高水準を付けました。この上昇要因は2つ考えられます。一つは上述の通り、前の週に北朝鮮がグアムへのミサイル発射計画を計画していることが明らかになったということです。二つ目は8月12日にバージニア州で起きた激しい衝突事件です。この事件は、白人至上主義者やネオナチ支持者らのデモ集団とその反対派が衝突して死傷者を出し、州知事が非常事態宣言を出す大規模な事件になりました。地政学リスクの上昇だけでなく内政不安も国債の信用リスクの上昇要因になります。

 

アルゼンチン国債のCDS

OTCデリバティブの発達促進を目的する世界的業界団体であるISDA(International Swaps and Derivatives Association 国際スワップ・デリバティブズ協会)は2014年に、アルゼンチン国債のCDSについてクレジットイベントが発生したとの決定を発表しました。国債のCDSについてクレジットイベントが生じた珍しい事例の一つです。

 

ギリシャ国債のCDS

ギリシャは2009年に政府の財政赤字が発覚したことを発端に、2010年から当事国のギリシャだけでなくその周辺国ともに、世界の金融市場を揺るがした欧州債務危機を引き起こしました。ECBなど世界の中央金融機関による政策や、ギリシャやその周辺国の債務問題に対する一つ一つの行動が発表されると国債市場やCDS市場などが大きく変動しました。

 

ギリシャ国債のCDSは国債CDSについてクレジットイベントが発生したもう一つの事例です。2012年3月にISDAはギリシャ国債のCDSについてクレジットイベントのデフォルトを認定しCDSの買い手には損失額の補填がされました。また、この直前にギリシャ国債のCDS保証率は204.03%にまで達しました。なお、CDS保証料率はCDS契約者間で決められる条件が多岐にわたるため、100%を超える場合も存在します。

 

CDS悪玉論は誤り

CDSはリーマンショックやサブプライムローン問題など2007年に始まった世界金融危機の原因とされることがあります。確かにそれは正しい面があり、当時のCDS取引は不透明であったこともあり世界金融危機を複雑化した原因と考えることができます。
しかし、CDSは世界金融危機の本質的原因ではありません。なぜならCDSは世界金融危機の本質的原因ではなく、あくまで本質的原因によって引き起こされた事柄をCDSは表面的に事象を映し出したに過ぎないからです。また、世界金融危機を複雑化させた原因はCDSという道具の誤った使い方であり、CDS自体は原因ではありません。

 

CDSは現実の信用リスクを示す先行指標となることが多いことから「危機のカナリア」と呼ばれることがあります。世界金融危機から10年が経ち、幸いCDS取引の透明化がされているので世界の金融問題は着実に解決しつつあるようです。今後は政府や企業問わず指標を通して財政の問題をいかに早期発見解決できるかが重要だと確信を持って言えます。

 

 

参考文献等

 

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部 片岡治樹

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス
 

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ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
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