衰退する百貨店業界の1位 三越伊勢丹の経営戦略「主力店舗に集中投資へ」

衰退する百貨店業界の1位 三越伊勢丹の経営戦略「主力店舗に集中投資へ」

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「衰退する百貨店業界の分析」シリーズ5

「衰退する百貨店業界の分析」シリーズも第5弾になりました。
これまでの「衰退する百貨店業界の分析」シリーズ第1弾〜第4弾まではビジネスモデルなど百貨店業界について総体的に論じてきました。しかし、実際に個々の百貨店はどのように経営されているのでしょうか?
今回からは売上高で上位3社の百貨店企業について、それぞれの売上や経営戦略、特長や課題等を経営の視点から詳しく分析していきます。

 

「衰退する百貨店業界の分析」シリーズ

 

  1. 衰退する百貨店業界のビジネスモデル分析 百貨店の定義とは?
  2. 衰退する百貨店業界の小売戦略とは? 店舗経営・サービス・立地などを分析
  3. 衰退する百貨店業界の歴史 小売王者の栄枯盛衰とは?
  4. 衰退する百貨店業界で求められる経営戦略の転換 市場環境を分析
  5. 衰退する百貨店業界の1 三越伊勢丹の経営戦略「主力店舗に集中投資へ」
  6. Jフロント、経営戦略転換で不動産に軸 衰退する百貨店業界に新百貨店モデル
  7. 独立路線の髙島屋、バランス型の経営戦略 百店業界の衰退と進化する企業

 

三越伊勢丹ホールディングスの概要

まずは、純粋持株会社である株式会社三越伊勢丹ホールディングス(以下、本文では三越伊勢丹ホールディングス)の概要を簡単に紹介します。

 

社名      株式会社三越伊勢丹ホールディングス

会社設立    2008年4月1日

資本金     503億円

代表取締役会長 赤松憲

本社所在地   東京都新宿区新宿五丁目16番10号

店舗数 国内   12社百貨店25店舗、専門館6店舗(伊勢丹6店舗、三越3店舗)

    海外   合計店舗33店舗(三越16店舗 伊勢丹17店舗)

 

(出典)

 

三越伊勢丹ホールディングスの部門別売上高構成比

三越伊勢丹ホールディングスの「部門別売上高構成比」を見ると、総売上高の9割を百貨店部門が稼ぎ出していることが分かり、百貨店部門に経営資源を集中させていると考えられます。百貨店部門では、伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の基幹3百貨店をはじめ、名古屋などその他都市圏、郊外で展開している国内の百貨店と海外の百貨店を運営しています。

 

次に、首都圏を中心に展開している「クイーンズ伊勢丹」という高級スーパーマーケットを運営する小売・専門店部門が総売上高の3%を占めています。

 

つまり、三越伊勢丹ホールディングスは百貨店部門で培ったブランド力を活かして高級スーパーマーケットを運営することで、自社の経営資源を有効に活用した経営を行なっていると言えます。

 

三越伊勢丹ホールディングスのビジネス関係図

(出所)『会社四季報 業界地図2016』(東洋経済新聞社、2015年)

 

三越伊勢丹ホールディングスの主な子会社と出資会社です。純粋持株会社である三越伊勢丹ホールディングスはこのように全ての事業を細分化し、子会社や出資会社に経営を分担させることで効率的な経営を行うことができています。

 

三越伊勢丹の主力店舗を分析

次に、三越伊勢丹ホールディングスの子会社である株式会社三越伊勢丹(以下、三越伊勢丹)に所属する店舗別売上高についてみていきたいと思います。

 

三越伊勢丹の国内主要店舗は9店舗となっております。伊勢丹新宿本店と三越日本橋店、三越銀座店舗の3店舗が主力店舗です。この3店舗で全店舗の売上高の80%を占めており、決算短信によると収益の基幹店舗として位置づけられています。この3店舗の中でも特に伊勢丹新宿店の売上高は42%とずば抜けています。三越伊勢丹は売上を伊勢丹新宿店に大きく依存していていることが読み取れます。

 

(出所)株式会社三越伊勢丹ホールディングス、「三越伊勢丹グループ各店・各社情報2017」を基に筆者作成 [http://www.imhds.co.jp/company/img/2017_DB.pdf]

 

三越伊勢丹ホールディングスのSWOT分析

ここで、三越伊勢丹ホールディングスを三越と伊勢丹に分けてSWOT分析をしてみたいと思います。周知のとおり、SWOTとはStrengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Oppportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字です。下の表をご覧ください。

 

 

(出典)根城秦・平木恭一『小売業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム・日経印刷株式会社)

 

三越は日本で最も古くからある百貨店であり、今なお老舗百貨店のブランド力は高いといえます。またそのブランド力を生かした外商は大きな強みとなっています。

 

三越の標的顧客は中高年の富裕層である一方、若者に魅力のある店舗を展開できておらず、若者の新規顧客を獲得できていないという弱みを持っております。

 

反対に伊勢丹は若者層に人気なファッションを取り入れたり、メンズ館を展開する取り組みをするなどして、広範囲な年齢層からの支持を得ています。中高年層の支持が強い三越と、若者の支持が強い伊勢丹という強みをグループ全体で持っていることにより百貨店業界の最上位に君臨しているといえるでしょう。

 

三越日本橋店の全館リモデル

現在、伊勢丹新宿本店と並ぶ旗艦店である三越日本橋店の全館リモデルの計画が進んでいます。
第1期の工期は2016年度下期から2018年春までで、120億円を投資するとしています。
その後も改装を続け、すべて完了後の改装オープンは2020年春、トータルでは200億円前後の投資を予定しています。2004年に日本橋店の新館をオープンした際などに本館も一部改装したことはありましたが、全館改装となると半世紀以来となります。主力の衣料品の販売を縮小する代わりに、アートや趣味に関連する商品を拡充し、従来の百貨店と異なる基軸を打ち出すことにしています。
中陽次本店長は「再開発で多様な街となってきた日本橋に合った新しいタイプの百貨店にしたい」と話しています。2024年東京五輪の新国立競技場の設計を手掛ける建築家の隈研吾氏がデザインを担当します。

 

また、国の文化財審議会の答申で、同店の建造物が国の重要文化財の指定を受ける見通しとなったため、改装に当たっては外観や本館の中央ホールの吹き抜けなど歴史的特徴は残すとしています。
2014年より「カルチャーリゾート百貨店」をテーマとした店作りを進めており、今回の改装はその一環となっています。これは、今までの百貨店の基本的な商品などモノの集積販売地としての役割を脱却し、目に見えないカルチャーを楽しむ場という斬新な発想転換を図っています。これまでは年齢や所得など属性を基に対象顧客を考えてきましたが、リモデル後は、あらゆる趣味(日本文化好き、旅好き、ネコ好きなど)を持つ人々に店舗でしか得られないサービスや商品を演出販売し、顧客をひきつけていく方針です。
これは、今までの三越日本橋本店の高齢富裕層中心の顧客やレトロな店舗の様式等と一線を画すことになり、今後の改装を経て、実際どこまでイメージを転換し、新規顧客層の獲得や外国人顧客を創出していくか注目です。成功すれば、顧客層が厚くなり、かつ絶好の立地ですので、売上が伸びるかもしれません。

 

(出所)

 

2017年春 三越千葉店・多摩センター店を閉鎖

そんな明るいニュースの中、三越伊勢丹ホールディングスは厳しい選択も迫られています。
三越千葉店(千葉市)と三越多摩センター店を2017年3月20日に閉鎖しました。
不振が続く地方・郊外の百貨店を閉鎖し、経営資源を東京都心の店舗に集中させたり、モノづくりから販売まで行うSPA型モデルの導入などの構造改革に投資するとしています。
三越千葉店は、1984年に地元百貨店から看板を替えて営業を開始しました。JR千葉駅近くの好立地を生かし、最盛期の売上高は年間500億円を超えていましたが、近年は専門店などに客を奪われ、売上は2017年3月期、148億円と大幅に減少しました。閉店の前年は、三越伊勢丹の全百貨店のなかで、最大の営業赤字を出していました。その一方で三越千葉店は一部の機能を残しており、今後は年次報告書にもある通り三越伊勢丹は大型店の減少から中小型店の拡大展開という方向に進むと思われます。

 

三越千葉店

 

三越千葉店周辺の苛酷な競争環境

三越千葉店の苦戦の背景には、過酷な競争環境があります。
周囲には、千葉そごうが駅に隣接しており、幕張には大型ショッピングモールが存在し、アウトレット店もあります。駅から近いという立地だけでは客も集まりにくくなっています。
また、証券アナリストの正田雅史氏によれば、土地の所有も重要だといいます。三越日本橋店のように三越伊勢丹ホールディングスが土地を所有しているのとは違い、千葉店や多摩センター店は賃貸のため、大手不動産を巻き込んだ再開発ができないということも大きな要因です。地主の出資を必要とする設備投資を絡めた再生戦略を取れないとすると、集客の大きな改善は望めず、閉店せざるを得ない状況になりやすいと言えます。
したがって、伊勢丹松戸店や伊勢丹府中店、伊勢丹相模原店も借地店舗であり、赤字経営ですので、厳しい選択に迫られるかもしれません。

 

地方店の閉鎖や赤字が相次ぎ、東京都心の店舗に資源を集中投下している現状を考察しますと、当面の三越伊勢丹は、伊勢丹新宿店、三越日本橋店、及び三越銀座店の業績を軸に営業を展開すると予測されます。
百貨店業界全体は苦境の中にありながらも、三越伊勢丹ホールディングスは人員をしっかりと確保した百貨店本来の本業回帰という独自の経営方針を打ち出しており、製造から販売までを工程に含めるSPAによる自主企画商品の開発も含めてどのように立て直してくるのか、注目していきたいと思います。

 

(出所)

 

三越伊勢丹ホールディングス、海外戦略を強化

今まで、三越伊勢丹ホールディングスの国内事情について述べましたが、海外展開にも力をいれております。最後に軽く触れておきたいと思います。まずは海外店舗数をご覧ください。

 

〈三越伊勢丹ホールディングスの海外店舗〉

イタリア   三越1店舗

アメリカ   三越1店舗

中国     三越1店舗、伊勢丹5店舗

シンガポール 伊勢丹6店舗

マレーシア  伊勢丹5店舗

タイ     伊勢丹1店舗

台湾     三越13店舗

合計店舗数  33店舗

 

上海三越

 

三越伊勢丹ホールディングスの東南アジアと台湾への進出が目立ちます。成長が著しいアジア地区の中において、すでに出店している国に旗艦店を出して弾みをつける戦略を取っています。15年に中国成都で開業されたショッピングモールに伊勢丹二号店を出店しましたが、このモール全体の開発からプロモーションまでの販売管理業務を一括担当しています。近年は百貨店事業のみならずこうした不動産開発ビジネスも行っています。三越伊勢丹ホールディングスの2017年度営業利益は240億円であり、そのうち不動産事業は64億円で全体の27%を占めており、売上比率が全体のわずか2%にもかかわらず、収益に関してはグループ内でも大きな割合となっております。

 

三越伊勢丹ホールディングスの海外展開における特徴

以下に三越伊勢丹ホールディングスの海外展開の特徴点をまとめます。

 

  • 日本の百貨店企業の中で最も多くの海外店舗を構えている。
  • 百貨店事業のみではない不動産開発事業も国内のみならず海外でも行い始めている。
  • 新富裕層が誕生しているアジア地区を中心に展開し、今後も拡大する戦略を取っている。

 

海外では、人口増加と経済発展の著しい地域で店舗数を増やしており、百貨店事業が縮小傾向にある日本国内と対照的です。三越伊勢丹ホールディングスの海外事業展開の拡大はまだ続きそうです。

 

(出典)

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス
 

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
エスネットワークスは、「経営者の視点でニーズを掴み、経営者の視点で課題を解決し続ける、最強パートナー」を実現すべく、成長し続けています。
 

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