ESG投資とは? 企業の見えない価値と企業・社会・地球の持続可能性

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近年、日本でもESG投資が急増

ESG投資という言葉をご存知でしょうか。E(Environment/自然環境)、S(Society/社会)、G(Governance/ガバナンス)への企業の取り組みに注目する投資方針のことです。定量的な財務データに依拠して短期的な収益だけを追求する投資方法とは異なり、環境や社会、ガバナンスなど定性的な要素を評価に組み入れて投資します。
このESG投資ですが、欧米では積極的に行われている一方、日本ではあまり浸透していませんでした。しかし日本でも近年ESG投資に充てられる資産額が急増しています。以前、「企業を何で評価する? GPIFも注目、ESG投資信託とは? SRI(社会的責任投資)とは?」という記事でESG投資とはなにか、ESG投資の目的などを解説しましたが、本記事では世界と日本のESG投資をめぐる動きを中心に解説します。

 

ESG投資とは

ESG投資とは、投資先のE(Environment)、S(Society)、G(Governance)の要素についての評価をポートフォリオの決定などに用いる投資方法をさします。環境、社会、ガバナンスへの取り組みは、短期的に企業の生産性を高める企業活動ではないものの、経営環境の様々なリスクやコストを軽減させ、長期的に利益を上げ続けるためには重要である、というのがESG投資の発想です。

 

ESG投資とSRIの違いとは

ESG投資と同様に財務諸表上の数値以外の見えない企業価値に注目する方法としては、SRI(Socially Responsible Investment)も存在しますが、違いはなんでしょうか。

 

SRIは、倫理的投資(Ethical Investment)とも呼ばれ、企業活動の社会に与えるインパクトを投資判断の材料とする投資方法です。たとえばタバコを販売する会社は投資先から排除するといった具合です。SRIでは社会問題への対応に優れた一部の企業を投資の対象とするのに対して、ESG投資では環境、社会、ガバナンスへの取り組みをもとに全ての企業を投資の対象としています。

 

世界のESG投資

世界のESG投資額の推移

グローバルなESG投資をめぐる情勢についてみていきます。以下のグラフ「世界のESG投資額の推移(単位:10億ドル)」では、2012年から2016年までのESG投資額の推移を表しています。ESG投資の定義が狭められたヨーロッパ以外のすべての地域で、2012年からの4年間で投資額は増加しています。(ただし日本を除く2014年のアジアの投資額は13年度末の為替レートをもとに、その他の国の2014年と2016年の投資額は15年度末の為替レートをもとに、USドルに換算されています。)

 

各地域・国の投資額に占めるESG投資額の割合

また各地域・国の投資額のうちのESG投資額の割合も増加しています。下の表をご覧ください。Global Sustainable Investment Review 2016によると、ESG投資に充てられた資産の投資資産全体に占める割合は、ヨーロッパを除いたすべての地域で増加しています。(2014年のアジアの数値は日本を含むが、2016年のアジアの数値は日本を含まない。)

 

 

日本のESG投資

日本でのESG投資についてのデータに注目します。Global Responsible Investment Review 2016  によると、日本のESG投資は、2014年は70億ドルだったのに対し、2016年には4,740億ドルと、2年間で約67倍にもなっています。

 

日本でESG投資が急増した理由

日本におけるESG投資が急激に増加した主な理由は、「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫の制定です。2014年2月、金融庁によって制定されました。「機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な『目的を持った対話』(エンゲージメント)などを通じて、該当企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る」べきだとする原則で、このスチュワードシップ・コードの受け入れは任意だったにも関わらず、2015年12月現在で201の機関投資家が受け入れを表明しました。

 

また、世界最大の年金基金である日本年金機構がPRI(Principles for Responsible Investment/責任投資原則)を受け入れたことも、ESG投資が浸透するきっかけになったとされています。PRIとは国連が制定した原則で、ESG要素を考慮した投資により、顧客や投資家の利益の最大化を図るべきだとする原則です。

 

日本におけるESG投資の投資方法のトレンド

以下のグラフは日本におけるESG投資の投資方法とその割合を示したものです。最も多いのは「エンゲージメントと議決権行使」で、半分以上を占めています。投資先企業の経営環境を鑑み、株主として積極的に発言権を行使することで投資の収益性の向上を目指します。また2番目に多くなっている「ESGインテグレーション」とは、これまで投資判断に用いられてきた財務的な要素に加えてESGの要素を考慮するというものです。

 

 

“ESG投信”の上場

日本でのESG投資の増加をさらに加速させそうなニュースもあります。環境問題や社会問題、ガバナンスへの取り組みに優れた企業を組み入れた投資信託が東京証券取引所に上場されると報じられました。非上場の投資信託に比べ手数料が安く値動きがリアルタイムで把握できる上場投資信託は、近年ファンド数も増え活発に取引されています。ESG投資がより浸透していくことが期待されます。

 

企業はESGに取り組み社会にインパクトを

世界中で年々増えているESG投資ですが、環境問題、社会問題、ガバナンスへの取り組みが企業の収益性に与える影響については、科学的な根拠がまだ十分に揃っているとは言い難い状況です。
しかし、企業も社会の一構成員である以上、社会的な問題への取り組みは、経営環境の改善につながり、かつ企業の持続可能性だけでなく人間社会や地球環境の持続可能性にもインパクトを持つと考えられます。異常気象や移民問題が様々な地域で顕在化する近年、企業のESG要素に対する取り組みがさらに重要性を増しそうです。

 

参考文献等

足立英一郎,村上芽,橋爪麻紀子著『投資家と企業のためのESG読本』(2016)日経BP社

 

柳良平著『ROE経営と見えない価値―高付加価値経営を目指して―』(2017)中央経済社

 

Global Sustainable Investment Alliance “Global Sustainable Investment Review 2016”

http://www.gsi-alliance.org/wp-content/uploads/2017/03/GSIR_Review2016.F.pdf

 

Global Sustainable Investment Alliance “Global Sustainable Investment Review 2014”

http://www.gsi-alliance.org/wp-content/uploads/2015/02/GSIA_Review_download.pdf

 

金融庁 「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫

http://www.fsa.go.jp/news/25/singi/20140227-2/04.pdf

 

PRI Homepage

https://www.unpri.org/

 

一般社団法人 投資信託協会

https://www.toushin.or.jp/

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス
 

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
エスネットワークスは、「経営者の視点でニーズを掴み、経営者の視点で課題を解決し続ける、最強パートナー」を実現すべく、成長し続けています。
 

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