衰退する百貨店業界で求められる経営戦略の転換 市場環境を分析

衰退する百貨店業界で求められる経営戦略の転換 市場環境を分析

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「衰退する百貨店業界の分析」 シリーズ4

市場環境の悪化、経営環境の悪化に立たされる百貨店業界を分析するシリーズの第4弾。今回は日本国内における百貨店市場における企業の林立の様子に触れてから、百貨店業界の市場規模など現状の動向を探り、今必要な経営戦略は何か論じます。

 

「衰退する百貨店業界の分析」シリーズ

 

  1. 衰退する百貨店業界のビジネスモデル分析 百貨店の定義とは?
  2. 衰退する百貨店業界の小売戦略とは? 店舗経営・サービス・立地などを分析
  3. 衰退する百貨店業界の歴史 小売王者の栄枯盛衰とは?
  4. 衰退する百貨店業界で求められる経営戦略の転換 市場環境を分析
  5. 衰退する百貨店業界の1 三越伊勢丹の経営戦略「主力店舗に集中投資へ」
  6. Jフロント、経営戦略転換で不動産に軸 衰退する百貨店業界に新百貨店モデル
  7. 独立路線の髙島屋、バランス型の経営戦略 百店業界の衰退と進化する企業

 

 

百貨店業界のプレイヤー

 

 

(出典)

成美堂出版「今がわかる未来がわかる業界地図 2016-17年版」

日本経済新聞出版社「日経 業界地図 2016年版」

 

百貨店業界のパワーバランス

2003年から2008年にかけて大手同士の再編統合が相次ぎ、業界勢力図が大きく塗り替わりました。三越伊勢丹ホールディングスとJ.フロントリテイリングの2社が売上高1兆円を超えております。高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリングとそごう・西武の3社が8,000~9,000億円台でこれら最大手が縮小する市場を奪い合う時代が到来しています。

 

大手百貨店企業の財務分析・比較

(出所)各社の2016-2017年の有価証券報告書、決算短信、ホームページを基に筆者作成

(注)J.フロント リテイリングの国内店舗数はは鳥取大丸を除く

 

大手百貨店企業の財務情報をご覧ください。上位5社の売上高がずば抜けているのが分かります。さらにそのうち髙島屋を除けば、大手百貨店企業からなるグループ会社であることがわかります。実際、各社は合併を通じて生き残りを図っています。また売上高のみでは、三越伊勢丹が最上位でありますが、営業利益ではJ.フロント リテイリングが高くなっております。これはJ.フロント リテイリングが百貨店事業のみに依存せず、ファッション専門店、ビル経営のパルコ事業やSC事業、専門店事業、インターネット関連事業などの幅広い事業戦略に成功していることが関係していると思われます。今後、より上位5社による百貨店業界の独占が進むと思われます。なお株式会社そごう・西武のROEが大幅にマイナスとなっているのは、店舗数の縮小に伴い損失が増大し、当期純利益が大幅にマイナスとなったためと思われます。

 

(出典)

成美堂出版「今がわかる未来がわかる業界地図 2016-17年版」

各社ホームページ参照

 

百貨店業界の動向

かつては、売上げブランドイメージなど多くの点で、小売業の頂点に位置していた百貨店ですが、バブル崩壊後の消費低迷や専門店、量販店、コンビニエンスストアなどの台頭の煽りを受け、売上の長期低落傾向が続いてきました

 

各社は低落脱出に向け、変化し多様化する消費者の嗜好を懸命に追いかける一方、不採算店の閉店などリストラも進めています。ここ最近では、都市部にある大型店が、リニューアルなどで売り場面積を拡大しているのに比べ、地方店は人員を削減し店舗を縮小する傾向が目立ちます。

 

一方で、訪日外国人客の「爆買い」があちこちで見られ、各社とも外国人へのサービス強化を進めています。免税カウンターの導入店舗を増やすとともに、席数を拡大したりしています。もはや百貨店にとって、インバウンドの存在が無視できない水準になってきています。しかしインバウンドの恩恵を受けられる企業は限られており、地方百貨店の状況は厳しいままとなっております。

 

また、2014年の百貨店売上高は、消費増税による影響で、爆買い効果にも関わらず前年を下回りました。19年秋にはさらなる消費増税が待ち受けており、業界の前途は依然として厳しいままとなっています。

 

百貨店業界の市場規模推移

 

近年の百貨店販売額の動向を俯瞰してみると1997年以降、2012年まで業界の市場規模は縮小し続けてきました。2013年に入ると、外国人のインバウンド効果やアベノミクス効果による景気回復への期待感から、バッグや宝飾品、時計などの高額品が売れ16年ぶりにプラスに転じました。

 

しかし、その後もそれ程ふるわず、2016年の売上高は約5.98兆円で、1980年以来36年ぶりに6兆円を下回る結果となりました。長期的にみると2010年代の売上高は、ほぼ横ばいで推移しており、百貨店業界が1991年の全盛の時は総売上が約9.7兆円であったことを考えると、近年はピーク時に比べて大幅に市場規模が縮小していることがわかります。

 

(出典)

百貨店販売額動向は日本百貨店協会「百貨店売上高」より作成

http://www.depart.or.jp/common_department_store_sale/list

立澤芳男 (2010) “商業と都市生活(商業業態の現場を通じて生活の変化を探る)” 「平成22年度 ハイライフデータファイル2010」

http://www.hilife.or.jp/datafile2010/pdf/01.pdf

 

百貨店業界、抜本的な経営戦略の転換が要される

百貨店業界の不振が目立ち、地方百貨店が淘汰されていく中で、大手企業が業界シェアを広げている傾向にあります。百貨店は今後、都市部集中の色彩を強めていくのは確かでしょう。このような中で、百貨店が生き残っていくためには、インバウンド需要や、より幅広い世代を取り込む経営戦略が必要になるでしょう。かつての百貨店のシステムを打ち壊すほどの斬新な経営戦略が求められているように思います。

 

(出典)

滝本哲史 「業界地図2016-17年版」2016年成美堂出版

転職体験談 http://kuriyaso.net/department2016

根城秦・平木恭一『小売業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』秀和システム、日経印刷株式会社

 

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
エスネットワークスは、「経営者の視点でニーズを掴み、経営者の視点で課題を解決し続ける、最強パートナー」を実現すべく、成長し続けています。

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