衰退する百貨店業界の歴史 小売王者の栄枯盛衰とは?

衰退する百貨店業界の歴史 小売王者の栄枯盛衰とは?

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「衰退する百貨店業界の分析」 シリーズ3

国内需要の減少やAmazonをはじめとする新興勢力の台頭など経営環境の変化に立たされる百貨店業界。衰退の一途を辿る百貨店業界の分析をするシリーズの第3弾、今回は百貨店業界の栄枯盛衰の歴史を分析します。“元”小売王者になるのか、ならないのか、今後も見逃せない百貨店業界に刮目します。

 

「衰退する百貨店業界の分析」シリーズ

 

  1. 衰退する百貨店業界のビジネスモデル分析 百貨店の定義とは?
  2. 衰退する百貨店業界の小売戦略とは? 店舗経営・サービス・立地などを分析
  3. 衰退する百貨店業界の歴史 小売王者の栄枯盛衰とは?
  4. 衰退する百貨店業界で求められる経営戦略の転換 市場環境を分析
  5. 衰退する百貨店業界の1 三越伊勢丹の経営戦略「主力店舗に集中投資へ」
  6. Jフロント、経営戦略転換で不動産に軸 衰退する百貨店業界に新百貨店モデル
  7. 独立路線の髙島屋、バランス型の経営戦略 百店業界の衰退と進化する企業

 

百貨店の始まり

百貨店シリーズも中盤に入ってきました。この辺でそもそもの百貨店の歴史についてご紹介していきます。

 

日本での百貨店の歴史は100年近くあります。まず1904年に、江戸時代から続く三井呉服店によって、株式会社三越呉服店が設立されました。倒幕による武家社会の崩壊による得意先の喪失や、洋服の登場により、幕末から明治期にかけて、呉服業は不振を極めたことが百貨店誕生の発端となりました。

 

翌1905年1月2日の新聞に、株式会社三越呉服店の広告が掲載され、これまでの呉服店から、アメリカに倣ったデパートメントストアへの変革を謳う「デパートメント・ストア宣言」が発表されました。この宣言が、日本におけるデパート(百貨店)の誕生であると言われています。

 

その後1920年前後には髙島屋、松屋、松坂屋、そごうなどの各呉服店が次々と株式会社へ組織変更し、百貨店化が進みました。各店舗はショーウィンドウの導入、そして雑貨、家庭用品などの品揃えの拡充など百貨店化を進めました。また各百貨店が、競って豪華で近代的な建物を建造することにより、人目を引いて集客を図り、江戸時代からの呉服に加えて、海外から美術工芸品や輸入した舶来品なども扱ったため、高級感を持たれるようになっていきました。当時の人々にとって、百貨店は単に何かを購入する場ではなく、ショッピングを楽しむ憧れの場所となりました。

 

 

 

(出典)

木綿良行 (2003)  “わが国の百貨店の歴史的経緯とその評価” 成城大學經濟研究

ウィキペディア「三越」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%B6%8A

三井広報委員会「三井の歴史」http://www.mitsuipr.com/history/meiji/mitsukoshi.html

 

ターミナルデパートの誕生

百貨店誕生の先陣を切ったのは、呉服店系の都心型百貨店でしたが、少し遅れてターミナル立地タイプの百貨店が登場しました。ターミナル型百貨店の特徴は先にも述べたとおり、高級志向ではなく大衆志向でしたので、庶民向けの商品を豊富に揃え一般大衆に受けました。

 

最初のターミナルデパートは、1920年に阪神急行電鉄(現在の阪急電鉄)の梅田駅構内に開店した白木屋です。これが世界初のターミナルデパートとなりました。その後世界恐慌の年である1929年には、阪急電鉄直営のターミナルデパート「阪急百貨店」が誕生し、各地の鉄道会社によって主要駅における百貨店開設が急速に進みました。大手私鉄による百貨店事業への進出は、1960年代まで続けられ、大手私鉄のほとんどは、系列に百貨店を持つようになりました。ターミナル型百貨店の登場は百貨店の大衆化という流れを加速させました。

 

高度経済成長期における百貨店

第二次世界大戦により、おおよそ206店舗あったとされる全国のデパートは、119店舗にまで減少しました。しかし、終戦後は高度経済成長の波に乗りデパート数も再び増加しました。戦後は戦前からの旧富裕階級が没落したことや、店舗拡大が進んだこともあって一般大衆の顧客化も一段と進み、一般大衆向けの商品までも扱う小売業の頂点として君臨するようになりました。

 

しかし1960年代から70年代に「セルフサービス」、「低価格」、「大量販売」が強みであるスーパーマーケットが台頭してくると、規模においても、品揃えにおいても、百貨店に匹敵するものも現れ、百貨店はスーパーとの差別化を図るために、セルフサービスと対極にある「対面販売」を強みとして、値段ではなく品質で勝負をするように変わっていきました。

 

また、低価格のスーパーマーケットの台頭を受け、地方百貨店の中には大手百貨店の傘下に入って資本力と信用力を増強して、百貨店の高価格路線へ対処する動きが表れる一方、従来からの価格競争路線を維持する為に自らスーパーマーケットに業態転換をしたり、大手スーパーの傘下に入ったりするものなどが現れ、独立系の地方百貨店は急速に減少していくことになりました。

 

(出典)

木綿良行 (2003)  “わが国の百貨店の歴史的経緯とその評価” 成城大學經濟研究

阪急電鉄「様々な生活文化を創り出したアイデアマン『小林一三』」 http://www.hankyu.co.jp/cont/ichizo/column1.html

ウィキペディア「阪急百貨店うめだ本店」

 

バブル期における百貨店

1985年のプラザ合意を契機として始まったバブル経済のもとでは、「高級ブランド品」も一般大衆にとって高嶺の花ではなくなり、購買可能な高額商品として受け入れられ、消費が拡大しました。このような消費傾向は、当然のことながら高価格化路線をいく百貨店の売上にも大きく影響し、その存在は「ハイエンド商品を扱う」「最高のサービスを提供する」と肯定的に捉えられ、1991年には、その総売上高は9.7兆円にまで達しました。(立澤芳男,2010)(日本百貨店協会によると2016年総売上は6.0兆円)そうした活況を受けて、百貨店はそれまでの店舗内の催事場で開催していた小規模美術展から、館内に本格的な美術館を開設して展覧会を専門に行うようにしたり、また、積極的に地方都市や日本国外の店舗数を拡大したりと、多くの分野で活発な設備拡充が行われました。

 

バブル崩壊から現在

1990年代にバブルが崩壊すると、発展の一途であったデパートにも陰りが出てきました。施設の老朽化やバブル期の無理な出店による経営状況の悪化により、デパートの閉店や統廃合などが進みました。また、郊外における大型ショッピングモールの誕生やネット通販の活発化、ファストファッション専門店の出店、コンビニエンスストアの台頭といった理由も重なり、現在、デパートの売上金額は減少傾向にあります。

 

(出典)

立澤芳男 (2010) “商業と都市生活(商業業態の現場を通じて生活の変化を探る)” 「平成22年度 ハイライフデータファイル2010」 http://www.hilife.or.jp/datafile2010/pdf/01.pdf

日本百貨店協会 http://www.depart.or.jp/common_department_store_sale/list

Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E7%99%BE%E8%B2%A8%E5%BA%97

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス

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