衰退する百貨店業界のビジネスモデル分析 百貨店の定義とは?

衰退する百貨店業界のビジネスモデル分析 百貨店の定義とは?

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「衰退する百貨店業界の分析」 シリーズ1

古くから日本の小売を牽引してきた百貨店業界。ところが今、老舗百貨店を巻き込む百貨店業界の合従連衡が進んでいます。果たして、百貨店業界は国内需要の減少など環境の変化に適応できるのか。今回から百貨店業界のビジネスモデル、市場環境、経営戦略、歴史など百貨店業界の過去を振り返りながら現状について分析します。

 

「衰退する百貨店業界の分析」シリーズ

 

  1. 衰退する百貨店業界のビジネスモデル分析 百貨店の定義とは?
  2. 衰退する百貨店業界の小売戦略とは? 店舗経営・サービス・立地などを分析
  3. 衰退する百貨店業界の歴史 小売王者の栄枯盛衰とは?
  4. 衰退する百貨店業界で求められる経営戦略の転換 市場環境を分析
  5. 衰退する百貨店業界の1 三越伊勢丹の経営戦略「主力店舗に集中投資へ」
  6. Jフロント、経営戦略転換で不動産に軸 衰退する百貨店業界に新百貨店モデル
  7. 独立路線の髙島屋、バランス型の経営戦略 百店業界の衰退と進化する企業

 

百貨店の定義とは? スーパーとの違い

百貨店とは、日本百貨店協会に加盟し、衣・食・住に関わる多種の品目を取り扱い、従業員による対面販売を主に行う商店で、スーパー*とは区別されます。百貨店は、売場面積が東京特別区及び政令指定都市で3,000平方メートル以上、その他の地域で1,500平方メートル以上の商店を指します。

 

また、経済産業省では百貨店を「衣、食、住にわたる各種商品を小売りし、小売販売額の10%以上70%未満の範囲内にある事業所で、従業者が50人以上の事業所をいう」と定義しております。(経済産業省「業態分類の定義」)

 

*スーパー:売場面積の50%以上についてセルフサービス方式を採用している事業所であって、かつ、売場面積が1,500平方メートル以上の事業所をいう。ただし、商業動態統計調査の家電大型専門店、ドラッグストア、ホームセンターの調査対象企業の傘下事業所で、調査対象となっている事業所を除く。 (経済産業省「商業動態統計」)

 

(出典)

経済産業省「商業統計調査」

http://urx.mobi/y4aF

http://urx.mobi/y4aH

 

百貨店の種類 「呉服系・電鉄系」とは?

日本には百貨店が複数ありますが発端によって種類を分けることができます。

 

 

(出典)

成美堂出版「今がわかる未来がわかる業界地図 2016-17年版」

日本経済新聞出版社「日経 業界地図 2016年版」

 

百貨店のビジネスモデル

百貨店の仕入形態

百貨店は商品を卸から仕入れて消費者に販売しているので分類上、小売業に含まれます。よって、小売業及び百貨店の仕入れ方式は以下に示すように大きく3つに分かれます。

 

百貨店の仕入形態① 買取仕入

仕入先から商品を買い取る仕入形態。仕入段階で仕入先の瑕疵がない限り返品はできません。仕入れた商品は小売店の所有となり、小売店は仕入れ時から在庫リスクを負うことはもちろん、保管責任を負担することになります。小売価格を決める権利(価格決定権)は小売店にあり、小売店は仕入価格に自分の利益分を上乗せして小売価格を決めます。

 

百貨店の仕入形態② 委託仕入

日本の百貨店とアパレルメーカーが独自に形成した方式で、「返品条件付き買い取り」ともいいます。仕入先から一定期間、商品を預りその販売を委託される仕入形態です。仕入れた商品は小売店の所有となりますが、売れ残った商品については仕入先に返品することができます。小売価格の決定権は仕入先がもっています。小売店は在庫リスクを負担しませんが、保管責任を負担することになります。卸業者やメーカーが在庫リスクを抱えることになるため、小売業者にとっての販売利益率は普通の買取仕入と比べて低くなる傾向があります。

 

百貨店の仕入形態③ 消化仕入

近年百貨店に多い仕入形態です。小売業者に陳列する商品の所有権を卸業者やメーカーに残しておき、小売業者で売上が計上されたと同時に、仕入が計上されるという取引形態です。
これは、百貨店や総合スーパーなどのように、多種多様な商品を豊富に品揃えする必要がある場合に有用な取引形態で、通常、テナント(卸業者やメーカー)と商品売買契約を締結し、商品が顧客へ販売されると同時に、テナントから商品を仕入れるという仕組みになっています。百貨店の店頭に存在する商品であっても、販売されるまではその所有権及び保管責任は取引先にあり、商品の販売価格決定権についても原則的に仕入先が有しています。小売店は通常、在庫リスクも、保管責任も負担しないことになります。一般に消化仕入は、小売業者から見ると在庫リスクを抱えずに商売ができる一方で、卸業者やメーカーが在庫リスクを抱えることになるため、小売業者にとっての販売利益率は普通の買取仕入と比べて低くなる傾向があります。

 

(出典)

EY Building a better working world

http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/retail/2010-10-22-02.html

 

BASIC KNOWLEDGES

http://www.the-apparel.net/info/sub07.html

 

百貨店の仕入形態まとめ

以下に百貨店における商品の仕入販売の要点をまとめます。

 

  • 価格決定権は在庫リスクを負う側が持ちます。

 

  • 百貨店にすれば在庫リスクが大きいほど、利幅も大きくなります。販売利益率は買取仕入が最も高く、委託、消化の順で低くなります。

 

  • 買取仕入の場合は、小売業者が自分の意思で商品を揃えます。一方、委託仕入の場合は仕入先の意向が強く反映されます。消化仕入の場合は完全に仕入先が主導権を握ることになります。

 

表のとおり、在庫リスクを負う側が、販売の主導権を持つことになります。したがって、買取仕入の商品は百貨店が宣伝し、販売することになりますが、委託仕入や消化仕入の場合は、仕入先が商品を宣伝し、又、百貨店に販売員等も派遣することになります。

 

 

 

百貨店の販売形態

百貨店の販売方法には、店舗販売と店外販売の2種類がありますが、周知のとおり店舗販売が売上の大部分を占めております。他方の店外販売は小規模ながら、外商や通信販売、WEB販売などが含まれます。通信販売やWEB販売は身近でわかりやすいと思いますが、外商とは何でしょうか?ここで簡単に紹介しておきます。

 

百貨店の売り上げ3割を占める「外商」とは?

外商とは、法人や多額の購買が見込める有力な個人客を対象に、店舗外で直接顧客を訪問して商品を販売する方法です。他にも「正札」価格より値引きをして販売するという特徴があります。百貨店では外商を専門とする外商部があり、その中にも個人部門と法人部門に分かれます。前者は個人の得意先へ出向き、商品を提案して販売をします。販売品目はギフト品・高級ブランド品・高級食材などがあります法人部門では、会社や官公庁などを訪問して、お歳暮やお中元などを販売します。呉服店系の百貨店初期から存在していたサービス部門す。

 

外商は百貨店の売上に直接貢献するだけでなく、固定客を大事にするサービスとしての意義が大きいされています。また、スーパーマーケットとの棲み分けから進められた、百貨店の高級化路線における取引先として重視され、高額商品の購入が期待出来る外商顧客という特徴とも相まって、外商部門は強化されるようになったケースが多いとされています。外商の顧客は大企業の関係筋や地主が中心です。

 

外商部員の数は百貨店の規模によっても異なりますが数百人程度であり、百貨店の本店に配属されることがほとんどです。外商は基本的に「掛売」のビジネスで、外商員は月末に顧客を訪問して売上を回収します。高額商品の取引を中心としているので、顧客からの信頼がないと成り立たない商法です。各百貨店によって全体の売上高に占める外商の割合は異なりますが、おおよそ23割を占めることが多く、百貨店の昔からの重要な販売形態の一つとなっています。

 

(出典)

FashionHR http://fashion-hr.com/hr-talks/hr-talks_real/4842/

日本の百貨店Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/日本の百貨店

 

百貨店の代金回収方法

百貨店は、法人・個人など不特定多数の顧客の利便性追求を志向しています。そのため代金回収方法は現金、商品券等の金券、クレジットカード及び自社クレジットカード(ハウスカード)による掛売りなど多岐にわたっています。以下に決済方法としてやや不明瞭な点もあるかと思いますので、ハウスカードと商品券について解説しておきます。

 

ハウスカードとは?

主に、百貨店やスーパー、専門店、鉄道、石油チェーンなどで発行されており、顧客の囲い込みや取引拡大が目的です。例えば、A店というお店が独自に発行しているクレジットカードのことで、そのA店の系列の中でしか利用することができないクレジットカードのことです。多くの百貨店がハウスカードを発行しており、高島屋のハウスカードでは最大1割のポイントが付き、お買物券が還元がされます。ハウスカードは、基本的に発行している系列店舗でしか利用できませんが、その分ポイント還元率が高いのが特徴です。

 

また、百貨店のハウスカードは、ポイント割引だけではなく、店内のラウンジが使えたり駐車場の優待等の特典が付属します。こうした特徴のあるハウスカードですが、しかし、近年限られたデパートのみでしか利用できないということは利便性に欠けるため、「VISA」や「MasterCard」、「JCB」と提携して、国内にとどまらず、世界中で使えるようにしているハウスカードが増えています。そのため前述した狭義のハウスカードは少なくなってきています。なお、国際ブランドを付帯したクレジットカードは、「汎用ハウスカード」と呼ばれています。

 

商品券とは?

百貨店では、自社グループでのみ使用できる商品券及び日本百貨店協会に加盟している百貨店で使用できる商品券(全国百貨店共通商品券)を発行しています。現金と引き換えに商品券を顧客に引き渡し、商品引渡時にこれを対価として回収するといった販売方法をとっています。商品券の発行も重要な顧客の囲い込み戦略の一つです。特に百貨店であればどこでも使える全国百貨店共通商品券があることは百貨店業界の大きな特徴です。ちなみに、全国百貨店共通商品券は2017年現在北海道から沖縄まで、全国の百貨店等約500店で利用できます。

 

(出典)

クレジットカード情報2016 BENRISTA http://card.benrista.com/housecard-matome/

知っとこ!ハウスカードのメリットを大公開  http://www.bushbabycamping.com/

日本百貨店協会ホームページ  http://www.depart.or.jp/common_item_ticket/show

 

執筆者:パイルズガレージ編集部

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス


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