ROA、ROICって何? ROEとの違い
目次
三菱ケミカル、経営管理指標にROICを導入
2017年1月26日の日本経済新聞朝刊に、株式会社三菱ケミカルホールディングス(以下、三菱ケミカル)が4月から投資効率を示すROIC(投下資本利益率)を経営管理の指標に導入するとの記事が載っていました。
そもそも、企業の経営管理に関する話でよく目にするROICやROEとは果たして何を表しているのでしょうか。ROICやROEの算出方法や値が意味することについて解説していきます。
そもそもROE、ROICとは?
ROE(Return On Equity)は自己資本利益率、ROIC(Return On Invested Capital)は投下資本利益率を意味しており、どちらも企業の財務管理に用いられ、企業の収益性を表す用語です。これらの値を見ることで、企業の経営の健全さを測ることが出来ます。
具体的な計算式は以下の通りです。
ROE=税引き後純利益÷自己資本
ROIC=税引き後純利益÷投下資本
また、投下資本=自己資本+有利子負債なので、この2つの違いは借金を含めるか否かということになります。
つまり、ROEは投資家・株主が出資した資本(=自己資本)が何倍になったのかという指標で、ROICは事業に投じた資本(=投下資本)が何倍になったのかという指標です。
ROEとROICの違いとは何か?
ROE及び ROICについて、それぞれの意味と計算方法を解説してきましたが、その2つのどちらを収益性の算出に使うかによって何が変わるのでしょうか?
ROEは投資家・株主から得た資産でどのくらいお金を稼いでいるのかという、投資家・株主目線での収益性の算出方法です。しかし、企業が借入金を増やすことによって自己資本率を下げれば意図的に高く見せることが出来てしまう数値です。
一方で、ROICは借入金についても考慮されているため、どのくらい効率的に事業で稼いでいるかについて、より実態に近い収益性の算出方法となっています。
つまり、ROICの方がごまかしの効かない企業の収益性の指標であるということです。
ROICを導入する三菱ケミカルの理由とは?
三菱ケミカルは今まで、ROA(Return On Assets)を経営指標として用いてきました。
ROA=税引き後純利益÷総資産
という計算式で表され、一見ROICと同じ意味を表すように見えますが、総資産には余剰資産や売掛金が含まれているため、より正確に事業の収益性を表すのはROICです。
そこで、三菱ケミカルは2017年4月よりROAからROICでの計算に一新し、事業部門ごとにROICの目標値を定め、最低基準のROICを下回り続けたら事業撤退を検討するという経営方針を採ることに決めたようです。これにより各部門に採算の改善方法などを求めていき、資本効率の向上を目指しています。
ROE、ROIC、ROAは目的に応じて使い分ける
ROE、ROE、ROICを見ることにより様々な角度から収益性を測ることができます。目的に応じて各指標を使い分けることができると良いでしょう。
ROE:投資家・株主から得た資産でどのくらいの利益を上げているのか
ROIC:事業でどのくらいの利益を上げているのか
ROA:資産でどのくらいの利益を上げているのか
ROE、ROIC、ROAの違いについて理解して頂けたでしょうか。CFOを目指す人にとっては重要なワードですので、きちんと理解し、意図的に操作されたROEの数値に騙されたりすることのないようにしたいですね。
執筆者:パイルズガレージ編集部
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
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