「株式持ち合い」の解消が進む理由とは? そもそも、目的やデメリットとは?
目次
はじめに
2017年2月8日(水)の日本経済新聞朝刊に富士電機株式会社(以下、富士電機)が富士通株式会社(以下、富士通)との1,000億円規模の持ち合い株式を売却するという記事が掲載されました。割合にすると、富士通の株式の11.1%を保持していた富士電機が富士通の株式の8.21%を売却するということです。
この「持ち合い株式」という言葉。普通の株式とは何か違いがあるのでしょうか?今回は「持ち合い株式」を見ていきます。
持ち合い株式とは?
まず日本には、株式持ち合いという複数の株式会社がお互いに相手方の発行済株式を保有するという状態が存在しています。この互いに保有している株式のことを「持ち合い株式(相互保有株式)」というのです。
この持ち合い株式は特に特別な能力、機能は有しておらず、他の株式と同様に自由に売買可能なものとなっています。
株式持ち合いの目的とは?
日本特有の株式持ち合いは戦後の財閥解体後から始まりました。その目的としては以下のメリットが挙げられます。
- 事業を行う中で長期にわたる取引を持続させる関係性維持のため。
- 資本自由化の中での外資による乗っ取りを回避するため。(安定株主の確保)
- バブル期に大量に発行された株式の受け皿として株式持ち合いが活用された。
株式持ち合いのデメリットとは?
しかし、この株式持ち合いの文化は他国ではあまり見られぬように不都合な部分も潜在していました。
それが以下のデメリットの3つです。
- 資本とは通常成長事業などへの投資に充てられるものであり、その資本が持ち合い株の購入に充てられることで効率的な経営がなされない。(これを資本の空洞化と言います。)
- 株主総会における議決権による監視機能が損なわれる(これを経営の歪曲化と言います。)
- 「物言わぬ株主」が多くなる。
進む株式持ち合いの解消とその理由とは?
株式持ち合いの解消の動き
様々な要因がありますが、現在株式持ち合いの解消の動きが進んでいます。
2016年8月18日の日経新聞web刊の記事では、上場している3月期決算企業が2016年3月期末までの1年間に持ち合い株式を実質で1兆円強削減したと掲載されていました。
株式持ち合いの解消の理由
株式持ち合いの解消が進められている理由としては以下のルールの追加やメリットが考えられています。
- 2015年6月に適用されたコーポレートガバナンスコードによって、効率的な経営のために持ち合い株保有に関して合理的説明が必要となった。
- 国際会計基準(IFRS)の採用が広がり、簿価の低い持ち合い株を売ってすぐに買い戻す「益出し」と呼ばれる方法がIFRSではできなくなった。
- 持ち合い株を削減することで保有株式の株価変動の影響を小さくするため。
このような理由と取引先との関係性維持を比較した上で、企業は持ち合い株の削減を進める動きが強くなっているようです。
3メガ銀行中心に株式持ち合いの解消の動き リスク削減へ
一般事業会社もそうなのですが、特に3メガバンクにおいてこの持ち合い株削減の動きは顕著となっています。銀行に対し株式の保有規制が敷かれていることもありますが(企業が発行する株式の5%まで保有することが許されています)、国際的な競争力を身に着けたいということが持ち合い株の削減を進める動きに繋がっているようです。
3メガバンクの自己資本に対する株式の割合は40%超であり、欧米主要行の6%に比べ突出しています。もし株価が下がってしまうと自己資本比率が低下し、貸し出しなどのリスクを取りづらくなる懸念が指摘できます。
株式持ち合いのまとめ
さて、今回は日本特有の株式持ち合いという習慣を見てきました。
時代が進み、グローバル化に対応するために日本の経営環境も変化し、こういった株式持ち合いのような長年の習慣も見直されています。CFOを目指す人はメリット、デメリットを比較した上で今までの常識、習慣を疑うという姿勢を持つことも重要です。
執筆者:パイルズガレージ編集部
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
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