資金調達や資産運用の新たな選択肢、ソーシャルレンディングの仕組みを解説

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銀行は必要なのか?

「銀行の機能は必要だが、銀行は必要か? Banking is necessary – banks are not.」

Microsoft 創設者 ビル・ゲイツ 1994年

 

彼がこのような発言をしてから約20年が経った現在、これが現実になりつつあります。

 

昨今、資金調達や資産運用に“ある”新たな選択肢が加わりました。また、2017年5月26日の日経新聞で、株式会社みずほフィナンシャルグループは同年6月に、ベンチャーキャピタル等と共同出資してベンチャー企業を設立することが報じられました。このベンチャー企業はIT、とりわけフィンテック分野を主に新規事業を立ち上げるとのことです。

 

このように、銀行はフィンテックに関わらずにいられない状況の中、“連携”と“対抗”二つの戦略が手中にあります。

 

さてそこで、銀行とフィンテックの関係性を考える上で漏らさずに知るべきことがあります。それは、20年前にビル・ゲイツ氏が言及したように、銀行のビジネスに大きな影響を与えるかもしれないフィンテックの中のひとつ、“ソーシャルレンディング”です。

 

今回はこの“ソーシャルレンディング”について解説します。

 

ソーシャルレンディングとフィンテックの関係性

ソーシャルレンディングのフィンテックにおける位置付け

ソーシャルレンディングとはChart 1から分かるように、あくまでフィンテックと呼ばれる概念の一種類に過ぎません。他には、クラウドファンディングや決済、ビットコインで有名な仮想通貨等、複数種類あります。

Chart 1 フィンテックの体系

 

フィンテックの全体像

「フィンテックとは何か」まずはその全体像から解説します。

 

フィンテックの定義

まず、「フィンテック(FinTech、金融技術)」の定義とは「ファイナンス(Finance、金融)」と「テクノロジー(Technology、技術)」を合わせた造語であり、金融にIT技術を掛け合わせた概念です。

 

従来のフィンテックと現在のフィンテックの違い

そんなフィンテックは昨今、新聞等のメディアで度々登場し、一種の流行語のように用いられています。しかし実際は、フィンテックと聞いても 、定義が曖昧で具体的に何を表すのか分からず、どの技術をフィンテックの範囲内として解釈するか分からない場合があるかもしれません。

 

よって、フィンテックを体系的に理解しなければ、既存のビジネスモデルや市場との関係性を把握できず、戦略を見出せないことに繋がりかねないので注意が必要です。

 

つまり、曖昧模糊としたフィンテックなわけですが、それもそのはずで、実はフィンテックという言葉自体は昨今のフィンテックブーム以前から存在しており、時代によって具体的な内容が移り変わってきたからです。

 

Table 1をご覧下さい。従来のフィンテックは、銀行のATMや決済のシステム等いわゆるバッグエンドシステム、“裏方”を支える部分が対象とされてきました。よって、株式会社野村総合研究所等のシステムインテグレーター企業が従来のフィンテック開発者となり、彼らはシステムの開発費用を収益モデルにするB to Bビジネスを主に行ってきました。

Table 1 従来のフィンテックと現在のフィンテックの違い

 

一方、現在のフィンテックはスマートフォンのアプリケーションで家計簿管理や決済を行ったり、個人が資産運用する際にAIからアドバイスを貰ったりする等、従来のフィンテックと一線を画するアイデアで、フロントエンドシステム、“表方”を対象としています。

 

よって、大手金融機関では思いもつかないような革新的なサービスを開発し、既存の金融機関に取って代わる可能性のあるベンチャー企業が、現在のフィンテック開発者となります。したがって、彼らは利用者と直に接するB to Cビジネスを主に行っています。

 

ソーシャルレンディングの由来

ソーシャルレンディングの定義

さて、フィンテックの曖昧さを紐解いたところでソーシャルレンディングの定義について解説していきます。

 

まず、ソーシャルレンディングの定義を一言で表すと、「お金を借りたい個人や中小企業と、お金を貸して利益を得たい個人を含む投資家を、ネットを介して結びつけるサービス」です。「フィンテック提供者が構築するインターネット上のプラットフォームを融資のマーケットプレイス(市場)として、資金が必要な借り手と投資家をマッチングサービス」とも表現できます。

 

また、“ソーシャルレンディング”は“マーケットプレイスレンディング”、“貸付型クラウドファンディング”、“P2Pレンディング”という別称があります。

 

しかし、三番目の“P2Pレンディング”は“Peer to Peerレンディング”の略であり、日本語で“個人間の融資”と訳すことができますが、最近はあまり使われていません。最近のソーシャルレンディングでは、その特徴である他の金融商品に比べて高利回りであることに目を付けた機関投資家が参入し、お金を貸し出すケースの割合が全体の融資額の中で増えたため、P2Pレンディングという言葉は実態を表さなくなったことが理由です。

 

ソーシャルレンディング誕生の背景にある金融危機

ところで、ソーシャルレンディングは欧米で生まれたのですが、背景には2007年の金融危機があります。

 

金融危機によって銀行が個人向け融資を縮小した結果、クレジットスコア(クレッジトカードローン等の返済履歴を基にして算出した、信用力がどれくらいなのかを定量的に把握できる点数のことです。最下層がサブ・プライム、最上層がスーパー・プライムと呼ばれています。)が高い個人であっても銀行から融資を受けることが難しくなりました。そこでインターネットで申し込むことができ、低金利で融資を受けることができるソーシャルレンディングが個人の間で普及していったのです。

 

ソーシャルレンディングの金融構造

 ソーシャルレンディングの仕組み

ここではソーシャルレンディングの仕組みをChart 2を用いながら解説していきます。

 

解説するソーシャルレンディングの仕組みは、日本で初めてソーシャルレンディング事業を始めた株式会社maneoの型式を参照します。

 

ソーシャルレンディングの仕組みは米国と日本で異なること、日本国内でも運営企業によって異なること、大方各社同じですが厳密に言えばこの二つの相違点があることに注意してください。

Chart 2 ソーシャルレンディングの仕組み

 

さて、融資の際に登場する関係者は借り手と貸し手と仲介者ですが、従来の融資では仲介者が銀行であったのに対して、ソーシャルレンディングにおいてはこの二者の間の仲介者がベンチャー企業等、非既存の金融機関であることが特徴です。

 

また、ソーシャルレンディングでは、借り手が中小企業であるところに特徴がありますが、以下の仕組みによってソーシャルレンディングが成立しているので見てみましょう。お金を借りたい企業、あるいは個人は、仲介者にインターネット上で借入の申し込みを行い、仲介者は申し込み情報からクレッジトスコア等の与信材料を確認します。クレッジトスコアは融資申込者の信用力を定量化した点数ですので、仲介者はそれに基づいて貸出金利を提示します。例えば、クレッジトスコアの低い人は信用力の低い人なので、高いリスクに応じた高い金利を提示する、という流れです。

 

そして、仲介者は複数の借り手から集めた債権をファンド化します。仲介者の収益は、借り手から支払われる融資に付帯する1%〜6%の手数料と、貸し手から支払われる手数料です。貸し手が分配を受ける際に手数料として融資額の数%(米国のソーシャルレンディング最大手企業 Lending Clubの場合1%)を仲介者に支払います。

 

他方、貸し手は仲介者が作ったファンドに“投資”します。実際に“融資”を行うのは仲介者ですので、貸し手が行うのはあくまで“投資”であることに注意してください。

 

また、貸し手はファンドの中身の企業名や財務諸表といった具体的内容は、法律の定めにより見ることができません(米国には、ファンド化されておらず見ることができる形式がある)。

よって、ソーシャルレンディングへの投資の判断は、仲介者の与信審査能力に依存することになります。

 

ソーシャルレンディングが低金利融資、高利回りを実現できる理由

次に、ソーシャルレンディングの最大の特徴にして、ソーシャルレンディングが個人や機関投資家の間で広まった理由について解説します。

 

その理由とは、借り手には銀行の提示する金利よりもかなり低く抑えられた金利を、もう一方の貸し手には一般の預金などよりも高い利回りを提示しているところです。実際に、Lending Clubが提示する金利はクレジットスコア最上層の場合、年率5%〜8%です。米国の銀行で同じ条件だった場合、ローンの金利は年率8%〜14%程度ですので、6割ほど安い金利だということがお分かり頂けるかと思います。

 

ソーシャルレンディング運営企業がこれを可能にしている理由は、以下の3点です。

 

  1. あくまで、借り手と貸し手のマッチングサービスに業務を集中しており、また、ソーシャルレンディング運営企業自身の資金を融資しているわけではないこと。よって、銀行のように貸倒引当金等の費用を負担するための資本準備金が必要ない点。
  2. 全てのサービスがインターネット上で完結するので、銀行のように支店やATMを持つ必要がなく、店舗維持費用やATM設置料がかからない点。
  3. 融資を申し込む際に高いクレッジトスコアを基準に設定しているので、結果としてリスクの低い借り手しか集めていない点。

 

以上のようなビジネスモデルを組み立てているので低金利融資、高利回りが実現するのです。また、1で述べたように資本準備金が必要ないので、資本が少ないベンチャー企業でもソーシャルレンディングを運営することが可能なわけです。

 

ソーシャルレンディング普及の要は規制緩和

これまで、資金調達や資産運用の新たな選択肢になり得る、ソーシャルレンディングについて解説してきました。

 

借り手にとっては低金利、貸し手にとっては高利回り、そんな魅力のあるソーシャルレンディングですが、残念ながら現在、日本は欧米に比べて普及していません。

 

その原因の一つに、関連法が整っていないことが挙げられます。

 

一方、同じくフィンテックの一種類である仮想通貨に関しては、いわゆる“仮想通貨法”が2017年4月1日に施行されました(下記、関連記事)。法律は時代の変化によって、実態に即したある程度の変化が必要です。

インバウンドで急増 訪日中国人御用達のビットコイン決済とは?

 

ソーシャルレンディングにおいても規制緩和が行われ 、銀行が融資の対象にできなかった個人や中小企業が資金を調達できるようになると良いですね。

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部 片岡治樹

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス


財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
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