地方創生なるか ふるさと納税とは? 恩恵と弊害

地方創生なるか ふるさと納税とは? 恩恵と弊害

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はじめに

自分の好きな自治体に寄付をすることで、税額控除を得ることができる「ふるさと納税」。この制度は2008年に始まりました。都市部への人口集中が進む現代の日本において重要な役割を担うものとして始まりました。しかし、2017年4月24日(月)の日本経済新聞で取り上げられたように、総務省による返礼品の見直し通知が今、物議を醸しています。

 

今日は、ふるさと納税の仕組みから今起きている問題まで解説していきたいと思います。

 

ふるさと納税とは

ふるさと納税は、自身の出身や現居住地に関わらず自分が応援したい自治体に寄付をすることで、寄付金額の2,000円を超える部分が所得税・住民税から控除される制度です。

 

例えば、10,000円の寄付を行うと、所得税では基本的に、(寄付金-2,000円)×税率分の得をします。住民税の基本分も上記とほとんど同様です。このほかに、住民税の特例分として、上記で控除できなかった部分を控除することが出来、実質負担が2,000円に抑えられます(控除の上限はありますがここでは割愛します)。

 

また、ふるさと納税を行うと寄付先の自治体から返礼品が送られてきます。返礼品の種類は、肉・野菜・魚などその地域の特産品や、工芸品、食器、宿の宿泊券、ゴルフ場利用権など多岐にわたります。

Chart ふるさと納税額推移

 

このグラフは、ふるさと納税制度を利用したふるさと納税額の推移です。2011年と2015年の数値が目立ちますが、ここではまず2015年に納税額が拡大した背景について平成27年度(2015年)の税制改正に注目してみます。

1.控除の限度額が1割から2割に
実は2014年まで、ふるさと納税によって控除される額は個人住民税所得割額の1割と上限が決められていました。しかし、税制改正によってこれが2割に引き上げられ、単純にそれまでの倍額を寄付するインセンティブが付与されたのです。

 

2.ワンストップ特例制度の創設
ふるさと納税の面倒な点は、控除を受けるために確定申告が必要ということでした。しかし、税制改正によって1年間で5つの自治体を超えて寄付を行わない限り、確定申告が不要となりました。これにより、サラリーマンが気軽にふるさと納税を行えるようになったのです。

 

ふるさと納税がもたらす恩恵と弊害

ふるさと納税の恩恵

2011年の納税額が際立っているのは、東日本大震災の被災地への寄付が多くなされたためです。

 

創設時には考慮されていなかったようですが、災害支援の際にもふるさと納税を通して被災地に納税という寄付を行うことが可能です。ふるさと納税の総合サイト「ふるさとチョイス」では、新潟県糸魚川市で起きた大火災や、熊本地震、台風被害を受けた北海道の市町村などへの寄付が実際に行われています。

 

ふるさと納税は、地方の自治体の税収を増やし行政サービスの質を向上させるという目的で作られました。地方創生が叫ばれる今の日本にとって魅力的な制度であり、納付者と自治体はwin-winの関係にあるように思えます。

 

ふるさと納税の弊害

しかし、この制度に異議を唱える声も少なからず存在します。

 

例えば、地方税の受益が対応しないという問題です。自治体は税金を活用し住民に行政サービスを提供していますが、ふるさと納税により実際には行政サービスを受けていない地域に実質的に税金を納められることで、行政サービスを受けている地域への税収が減ってしまうのです。

 

また、被災地支援の額が巨額となり、寄付者に対して約7,900万円が還付されたという事例もあります。この還付は居住する自治体からの還付となりますので寄付者が居住する自治体にとっては想定外の出費を強いられる可能性があるのです。

 

ふるさと納税、話題の返礼品問題とは

総務省は2017年4月1日、全国の自治体に返礼品の自粛を求める通知を送りました。自粛を求める対象となる返礼品は、価格が寄付額の3割を超えるものや、商品券・家具・家電・宝飾品・腕時計など制度の趣旨に合わないものです。

 

返礼品にはこれまで制限が与えられておらず、各自治体の裁量で決めることができていました。しかし、以前から高額な品の返礼による過当競争が続いているなどと指摘されており、初めて基準を設けることになったのです。ただこの通知に強制力はなく、今後自粛するか継続するかは各自治体の判断に委ねられます。

 

これまで高価な品や、家具などを返礼品としていた自治体などでは、まだ対応に迷っているところも少なくありません。モノづくり産業が盛んな地域では、牛肉や野菜が許され、家具や腕時計がダメなのはおかしいという主張もあります。

 

強制的な規制がない以上は、「ふるさと納税」の目的に沿った運営が行われてほしいですね。

 

 

執筆者:パイルズガレージ編集部

編集者:株式会社mannaka

協賛 :株式会社エスネットワークス
 

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