経営者になる前に、人生の目的について考える。吉見氏 対談【前編】
「欲しがられる人材になりたい人が集まるプラットフォーム」である『PILES GARAGE』。企業を”個”の力で支える、「杭(PILES)」のような人材を育てる「場所(GARAGE)」として、若手社会人に考えを深めるきっかけを届けたいと、生き方を語り合う事業「X-エックス-」とコラボレーションをすることで立ち上がったこの対談企画。
第一線で活躍するベテラン社会人の『強みのスキル』について、仕事や人生観に触れつつお話を聞いていきます。
今回インタビューをさせて頂いた吉見氏は、現在30歳。今、新卒で入社した会社から数えて2社目にいる吉見氏は、過去の原体験から経営者を目指すようになり、企業で成果を出しながら個人でも活動をされています。そんな吉見氏は、あるきっかけがあり、人生の目的や自己認識を見つめ直したと言います。
今回は吉見氏の原体験や人生の目的、これから実現していきたいことなど、「X-エックス-」を運営する株式会社Mi6 代表取締役社長の川元氏とPILES GARGAE編集長の柴田が深く話を伺って参りました。20代の方必見のインタビューをぜひ、お楽しみください。
以下
吉見:吉見 辰之介
川元:株式会社Mi6 代表取締役社長 川元 浩嗣
柴田:株式会社mannaka 代表取締役 柴田 雄平
昔から人を笑顔にすることが好きだった
柴田
最初に自己紹介と現在しておられるお仕事について教えてください。
吉見
吉見【しんのすけ】、30歳です。子どもが2人と妻の4人家族です。仕事は、今は新卒から数えて2社目にいます。新卒では保育園の運営会社に入社し、人事や人事企画を約5年間やっていました。2社目の現在の会社は人材系の会社で、BtoBの営業と、営業戦略や新規事業の立案等をやっています。それから個人としても活動しており、企業の中間管理職やマネジメント層の方々のコーチングや人事制度設計のアドバイザーをやらせてもらっています。ずっとHR系にいたのでそこが強みだと思っています。
川元
保育園の運営会社にいらっしゃった時は、年間で何人ぐらい採用をされていたんでしたっけ?
吉見
保育士さんと栄養士さん、看護師さんと本社勤務の総合職の方、全部合わせて年間で300人ぐらい採用していましたね。
柴田
元々、人材系をやろうと思っていたんですか?
吉見
元々、人に興味はありました。僕は男3兄弟の次男として、割と自分のやりたいようにやらせてもらって育ってきたので、その中で人を観察する癖みたいなものが小さい頃からありました。人はどう思うのかとか、どうすれば人は笑顔になるのかとか、そういうことをよく観察していたんですね。だから人を喜ばせること、特にサプライズなんかは結構好きなタイプです。
川元
吉見さんってホスピタリティ精神溢れる感じがしますもんね。
柴田
それから自然と人に関わる仕事をしていきたいなと思うようになったんですね。高校、大学は何をされていたんですか?
吉見
僕はずっとサッカーをやっていたんです。高校までは軍隊のようにガツガツと、大学ではサークルに入りサッカーをやっていました。高校ではどれだけ頑張っても県でベスト16ぐらいまでしかいけなかったんですけど、大学ではサークル活動ではありますが、全国優勝をすることができたんですよ。そこまで強いメンバーが揃っているチームではなかったと思うんですが、それぞれのメンバーが相乗効果を発揮して、目指していたところにたどり着くことができたという経験をしました。
それから、こういうことを社会でやるにはどうしたらいいだろうか、ということを考えたんです。僕が就職活動をしていた2010年ぐらいのタイミングでは、これから保育や介護が伸びるといわれていたので、新卒を募集していなかった新進気鋭のベンチャーに飛び込み、入社をしました。
当時、いろんな会社を受けて、内定ももらっていたんですけど、なかなかピンと来ていなくて。その時、ちょうど母親の知り合いで船井総研の方がいらっしゃって、会いに行って紹介されたのが、僕が新卒で入社することになった会社の社長だったんです。この人と一緒に働いたら何かありそうだと思ってビビッときたのを覚えています。その面接の時には「お前を幹部にのし上げてやる」というようなことも仰っていただいて、飛び込んでみることにしたという経緯です。
経営者になったら見える世界を見てみたかった
柴田
そこからどのようにご自身のスキルを磨いていかれたのでしょうか?
吉見
目指すところがあって、逆算してスキルを磨いたというよりも、その場その場で思いっきり仕事をしてスキルを磨いていったという感じが強いです。一方で「経営者になったらどんな景色が見えるんだろうか」ということはいつも強く意識していました。父は大企業のサラリーマンをやっていたんですが、祖父が父方母方の両方とも経営者なんですね。昔から経営についての話を聞かされていて、僕自身は人の上に立ちたいというよりも、上に立った時に何が見えるのかということに興味がありました。先ほどお話ししたサッカーの経験と併せて、人に何か良い影響を与えて、集団として強いものになるという化学反応が、経営者というポジションについたら一番よく見えるんじゃないかと思い、経営者を本気で目指すようになりました。
柴田
いつ頃から独立起業したいと思っていたんですか?
吉見
新卒の時からですね。
柴田
では、なぜ2社目に転職されたのですか?
吉見
1社目の会社では、300人採用を5年間続けていて、採用し育成するという満足感はあったものの、保育業界の「負」として、採用をすればするほど、精神的に病んでいく人が増えていくのを目の当たりにしました。採用した人全員のメンターを僕がやっていたんですが、ケータイ電話は常に鳴りっぱなし。相談をしてくれるのは嬉しい反面、採用すればするほど自分の仕事は増えていきました。自分のやっていることが世の中のためになっているのか? ということや、これは本当にやりたいことなのか? 300という数字に自己満足していないか? など、考えるようになっていったんです。
そして自分の子どもが生まれた時「子どもにこの仕事をやっていると胸を張って言えるか?」と考えた時に、首を縦に振れないと思ってしまって。後悔しない道を選択しようと思い、違う道を選ぶことにしました。
今までは決められた枠の中でどんな人材を採用するかということだけを考えていればよかったんですけど、今の仕事は経営者と関わり、会社をどのようにしていくか、そのためにどんな人材を採用するかを議論した上で、採用を進めていくので、難しさもありますが楽しさや嬉しさがあります。
そして、2社目に入ったもう一つの理由としては、自分のやってきたことが社外でどれだけ評価されるのかを見てみたかったということです。これまでは、自分が与える価値に対して投資をしてもらえるということを経験したことがありませんでした。僕はそういう「自分が与える価値に対して投資してもらえる力」を身に付けたいと思ったんです。
経営者になることを目的にしない
川元
そう思うようになったきっかけがあれば教えてもらっても良いですか?
吉見
経営者になることが目的だったのが、目的が経営者になることから一人一人がよりよく生きていくために何をするか、ということになったということでしょうか。そこには、松田さんという次世代リーダーのためのプログラムを組んでいる方との出会いがありました。すごく端的に言うと「自己認識力を高めることが、世界と繋がることだ」と言っていたんです。そのプログラムを経て、僕は自分がどういう人間であるかということが分かり、自分のやりたいことや、自分がどう世界と繋がりたいのかを考えさせられるきっかけになりました。
ビジネスモデルやマーケットソリューションだけじゃなくて、どんな風に自分を世の為、人の為に投資できるかということを考えました。そうしたことで、これまでの自分は「お金を稼がないといけない」という強い固定観念があったことに気づいたんです。お金が全てではない。お金は必要とすれば入ってくるので、それを信じてやるかやらないかの話だと思うようになりました。今までの自分は随分と小さい考えだったんだな、ということが分かったんですね。しかし否定はせずに、そういう自分もいるんだということを承認しています。
川元
吉見さんはこの半年ぐらいで随分変わったなという印象です。これまでの思考回路は、いかに実績をあげるかとか、いかに稼ぐかというところに寄っていた気がするんです。会社を辞めることを会社に伝えた時にも「お願いだからやめないでくれ。起業の準備とかしてもいいから」と言われていたというぐらいなので、会社の中でもすごい実績を出されたんだと思います。それはそれで大事だけれど、スキルとか実績とかお金とか、そういうところから人間性を大事にしたところにシフトしてきた感じがありますね。
柴田
経営者になること自体が目的の人は事業が立ち行かなくなることが多いんですよね。事業は継続しないといけないので、経営者になることが目的の人は、経営者になったらゴール達成なので、その先のゴールがないんです。大きな目的があるのなら、経営者になるということは一つの手段でしかないので、そのための事業で売上が立ち、利益が出て、納税をするという流れができれば事業は継続していくと思います。
川元
今は副業をされているということですが、次の道はご自身の中で見えていますか?
吉見
今やっているコーチングや組織設計のアドバイザーとは少しずらしたところで、生き方を諦めてしまっている人の問題解決と向き合っていきたいと思っています。経済的な理由で出産を諦めてしまっていたり、チャレンジを諦めてしまったりという人たちの声を聞いているので、そこの問題解決の糸口を見つけていくようなことができたらと思っています。
柴田
今、目指している目的に対しては、自分の子どもたちに誇れると言えますか?
吉見
まだ形にはなっていませんが、自信をもって誇れると言えます。そして、今考えていることは、自分がいなくなった後にも残るようなものを作らないと自己満足で終わってしまうということです。自分には娘と息子がいるので、その子たちがよりよく生きられる社会を作ることが、子を持つ親としてやりたいことですね。
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今回の対談の前編では、人生の目的について考えるような内容をお届けしてきました。経営者になること、経営者を目指すことは素晴らしいことではあるけれど、目に見えて分かりやすいものだけを目指してしまうと、本当に自分が人生を懸けて目指していきたい、本当に成し遂げたいことが見えなくなってしまうこともあるかもしれない、ということを感じました。後編でも引き続き、人生の目的について3人が対談しています。後編もぜひご覧ください。
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記事:PILES GARAGE